事業者は従業員の労働を管理するために、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿等の帳票の3つを作成する必要があります。ところが、これら3つの帳簿について、多くの事業者は間違った知識を持っています。そこで本稿は、従業員の労働管理に必要な賃金台帳、労働者名簿、出勤簿について、勘違いしやすい3つのポイントをご紹介します。
労働基準法で定められた従業員の労働情報管理
事業者は労働基準法に定められた法的義務として従業員の労働管理について、
- 1)賃金台帳
- 2)労働者名簿
- 3)出勤簿等の帳票
を整備する必要があります。
しかし、これら3つの書類については、多くの事業者で間違った知識を持っていることをお見受けします。
そこで本日は、従業員の情報記録について間違えて覚えやすい点をご紹介します。
労働情報管理で間違えやすい3つのポイント
間違え1)源泉徴収簿は賃金台帳の代わりになる
まず、賃金台帳には、基本給、各種手当、保険料等の控除金額等の重要な事項が記載されます。
賃金台帳は、会社が従業員に渡した給与明細を会社が管理し、何かあった時の支払証明にも役立つ重要な帳票です。
この賃金台帳について、年末調整時に作成する源泉徴収簿で代用できると考えている方が多くいます。
結論から言うと源泉徴収簿は、あくまで課税支給額と源泉所得税が記載されているに過ぎません。
従って、源泉徴収簿を賃金台帳として使用することはできません。
間違え2)履歴書を労働者名簿に転用して良い
また、労働者名簿についても、採用時に提出してもらう履歴書等に雇用年月日や退職年月日等を記載して、労働者名簿と称して取扱っている事業主の方がいらっしゃいます。
これも労働者名簿について法令で定められた内容を記す必要があります。
ただ、様式については、必ずしも法律で決められているわけではなく、必要な事項を記載しておけば良いこととされています。
となると、履歴書でも必要な事項が記載されていれば、労働者名簿の代用となっても良いような気がしますが、行政官庁は履歴書はあくまで履歴書であるので、労働者名簿は別途作成すべきとのスタンスです。
間違え3)勤怠管理の責任は従業員にある
労働時間が把握できるのであれば、出勤簿として必ずしもタイムカードを導入する必要はありません。
パソコンのクラウドで勤怠管理したり、出勤日に従業員に捺印やサインをさせる形式でも問題ありません。
ただ、ここで注意しなければならない点は、労働時間の把握の義務があくまで使用者に残るというものです。
つまり、労働者がタイムカードを正しく打刻しなかったり、始業・終業の時刻を正しく記載しない場合であっても、使用者は労働者の労働時間を把握する必要があります。
例えば、加重労働により労災事故が発生してしまった場合、労働者が正しくタイムカードを打刻していなかったから、労働時間の実態がわからなかった、という言い訳を使用者が行うことはできません。
これは、長時間労働が行われて従業員に何かあった時も同じ考え方であり、使用者は定期的に出勤簿や出退勤管理システムのチェックを行う必要があります。
今あるものの転用は簡単だが法のほうが強い
賃金台帳、出勤簿、労働者名簿は、労務管理を行う上でも非常に重要な帳票です。
今あるものを転用するのは効率的かもしれませんし、時間管理は従業員が行うべきものという考え方も当然。
しかし、法が定めたものは慣習に勝つのが世の常。ぜひ、上記の間違えを起こしているならば、これから改善していきましょう。
今後のご参考になさって下さい。