原材料価格の高騰に加え、小売店による値下げ圧力により、もやしの価格が安くなりすぎて、生産者がコストを吸収しきれていないことが話題となっています。一方で、なぜ小売店が「もやし一択」で安売りの客寄せを続けるのかも疑問点として浮かびます。その背景には「キャベツ」の高騰が一つの要因としてありました。
もやし安売りで生産者が悲鳴。話題は広がる。
ヤフーニュースでも掲載されたことで最近話題になっているのが、もやしの価格が安すぎるという問題です。
参考リンク:もやし協会「限界だ。1袋40円に」 円安直撃、そもそもなぜ安い?:withnews
withnewsの記事が伝える通り、もやし生産者は、円安や天候不順による種苗代の高騰、大手スーパーマーケットによる政策的な「もやしの安売り合戦」に巻き込まれて、企業努力ではコスト吸収がもはや出来ない状態に追い込まれています。
ここで一つ気になるのが、なぜスーパーマーケット等の小売店(以下、小売店)は「もやしを狙って安売りするのか?」ということです。
もやし安売りの背景にはキャベツの価格高騰が大きく影響している
実は、もやしの安売りの背景には、「もやし以外のある野菜の価格高騰」が大きく絡んでいるのです。
それは、キャベツです。
キャベツは本来、小売店にとって、他の野菜に比べてkg単価が安く、「売る計算」がしやすい優等生タイプの野菜でした。
更に、キャベツのレシピを考えてもらえればわかるように、キャベツはあらゆる料理に活用される野菜です。
サラダ、炒め物、鍋、揚げ物、至るところでキャベツは使用されるため、「安く売れれば必ず売り切れる」商品だったのです。
ところが、優等生タイプの野菜だったキャベツの価格が、産地の减少や天候不順により、ここ数年で突然暴れ始めます。
以下は、キャベツの価格推移を5年ベースでチャートにしたものです。
5年前には、kg単価が高値で160円程度だったものが、昨年は高値が220円を超え、5年間で40%近くの上昇を見せています。
昨年の野菜高騰、特にキャベツが1玉で500円、600円に値上がりしたことは、皆さんもよく知るところでしょう。
本来ならば、もやしが安売りできなければキャベツを安売りし、キャベツが安売りできなければもやしを安売りし、という形で、「使う頻度の高い日常野菜」で客寄せを行ってきた小売店、特に安売りをしてきた店にとっては大打撃です。
もやし・キャベツのセット売りは小売店のドル箱だった
更に、他の野菜を拾う(業界用語で「見つけて買う」という意味)にも、じゃがいも・玉ねぎ・ニンジンも高騰しています。
こうなってしまえば、小売店のバイヤーが考えることは「安売りで客寄せするなら、もやしくらいしか計算できるものがない」というものでした。
もやしの安売りは、もやし単体で起きた悲劇ではなく、このように他の野菜、特にキャベツの価格と複雑に絡み合って起きています。
安いものには必ず安い理由があることを啓蒙しよう
これらを解決するためには小売店と生産者双方が、
- 小売店:マーケティングについてもっと深く考え、商品価格を上げる努力を行う
- 生産者:地産地消を旨として、流通インフラを構築することで価格により一層の発言力を持つ
という行動を取る必要があります。
これに加えて、一般消費者は「安いものには必ず安い理由がある」ということを認識し、ある程度までの価格上昇に理解を示す必要があるでしょう。
近江商人の3方良しではありませんが、インターネットという情報インフラが出来た今、皆が事実を把握し、協力し啓蒙し合うことで、十分に状況を良くすることはできるはずです。