中小企業にとって大きな取引先の貸倒れは、すなわち企業存亡の危機を意味する。中小企業倒産防止共済に加入しておけば、月々の積立で最大8,000万円の貸付を中小企業基盤整備機構から借り入れることが可能だ。自社の規模に合わせて、節税対策や経営者の年金代わりに利用することも可能な優れた制度のため、ぜひ活用したい。
大きな取引貸倒れは中小企業の命を危ぶむ
町工場の倒産、取引先企業の倒産により共倒れする中小企業、ドラマや映画でそんなストーリーが描写されているのを見ると、他人事には感じない、瞬時に背筋がぞっとする読者も多いかもしれない。
ニュースで流れる大手企業の経営破綻の裏には、必ず関連する中小企業も共倒れしているのが悲しい現実だ。
そんな中小企業にとって、何か対策はないのだろうか?
実は「中小企業倒産防止共済」という制度がある。独立行政法人の中小企業基盤整備機構が昭和53年に発足させた制度だ。
制度設立の目的は、中小企業やベンチャー企業が、取引先の倒産によって共倒れすることを防止することである。
月々積み立てれば、無利子で最大8000万円の貸付を行ってくれる。
制度活用による融資を申請した場合、貸付金額は「掛金総額の10倍」か「回収できなくなった売掛金の額」のどちらか”少ない額が上限”となる。
掛金月額2万円で10年間納付していたとすると掛金総額は240万円。その10倍は2400万円。回収できない金額を2500万円とすると、2400万円までの貸付が無利子で受けられる。
また、貸付金を一度も受けていない場合、40か月以上掛け金を納付すると、解約金は100%返戻される。
しかもこの制度、「節税効果」+「考え方によっては年金」ともなるので、ぜひ最後まで読み進めてもらいたい。
中小企業倒産防止共済の加入要件は?
この共済に加入するための要件をまとめておこう。
「資本金の額または出資の総額」または「常時使用する従業員数」の条件に該当する会社または個人の事業者に該当する条件はこちらから御覧いただける。
業種によって異なるが、従業員数50人以下、資本金額5000万円以下なら加入できる。
ただし加入できない条件もいくつかある。
- 住所、事業の変更を繰り返し行い、継続的な取引の状況の把握が困難な方
- 事業に係る経理内容が不明の方
- 現に共済契約者となっている方(重複加入はできない)
その他、すべての条件は、こちらからご確認いただける。
中小企業倒産防止共済に入るメリット
中小企業倒産防止共済に加入すると以下のような恩恵にも預かれる。
- 1)月額掛金は5,000円〜20万円まで幅があり自由に設定できる。
- 2)掛金は手続きすれば会社の状況に応じて変更できる。
- 3)掛け金は損金決済可能。個人事業主も経費として処理できる。→売り上げが大きく上がった年には掛金を増やして”貯金”しておくことで節税できる。
- 4)事業を継ぐ人への承継も可能→強制解約にはならないので相続税対策に利用
節税対策にもなり、解約返戻金を退職金や年金として考えることもできる、素晴らしい制度である。
ただし、解約返戻金は全額利益として課税されること、掛金の納付月数によっては元本割れすること、貸付を受けると掛金の一部が消滅する、というデメリットもあるため、加入にあたってはよく熟考する必要がある。
「中小企業倒産防止共済」は、制度が出来て36年が経過する。奇しくも筆者は昭和52年生まれの37歳、生まれはほぼ同じである。これだけ同じ内容の制度が継続しているのは珍しい。十分にニーズがあるからこそ存続していると言えよう。