スカイマークが会社更生法でなく民事再生法を選んだ理由

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 航空業界第三位のスカイマークが民事再生法の適用を申請し、3月1日付けで上場廃止となることが大きな話題となっている。スカイマークほどの大きな会社がなぜ会社更生法ではなく、民事再生法を選んだのか?両法の本質がどう違うかを解説し、紐解いていく。最速のスピードで経営再建を望む思惑が見えてくる。

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スカイマークが民事再生法適用 上場廃止も

 1998年に航空業界へ新規参入し、当時ANAとJALの2社による寡占状態であった航空業界の風雲児となった「スカイマーク」が、業績の急速な悪化によって経営に行き詰まり、裁判所に民事再生法を申請した。

 2012年3月期決算で、売上高803億円、営業利益153億円を記録し、過去最高益を叩き出して、わずか3年で今回の事態に陥った。

 経営悪化の理由は、円安による燃料費の増加、格安航空会社との激しい競争による急激なキャッシュ・フローの悪化に、ボーイング社へ発注していたA380機を契約解除しようとしたことで発生した違約金が決定的なダメージを与えた形だ。

 同社は民事再生に伴い、東証一部も3月1日(日)付で上場廃止となる。

 なぜスカイマークは会社更生法ではなく、民事再生法を選んで再建の道を探るのだろうか?

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民事再生法とは? 会社更生法と何が違うのか?

 民事再生法とは、平成12年4月よりスタートした「再建型」の倒産制度で、経済的に窮境にある債務者の事業または経済生活の再生を目的とする法律である。

 民事再生法の申請が認められるには、噛み砕くと以下の要件が必要だ。

  • 1)多額の負債返済のためにキャッシュ・フローが悪化して倒産しそうになっている
  • 2)手形の不渡りや支払不能、それらが起こる要因を抱え破産のおそれがある
  • 3)事業自体は継続して収入を得られる状態で負債返済に可能性が見込まれること
  • 4)社会通念に反する疑いがある事業ではない、もしくは社会公益性が高い事業であること
  • 5)債権者から民事再生手続きの申請について同意が求められること

 手続きには、以下の手順と期間が必要と言われている。

  • フェーズ1)再生手続き開始の申し立て決定:2週間
  • フェーズ2)再生債権の届出:申立日から6週間
  • フェーズ3)再生計画案の作成:申立日から2ヶ月
  • フェーズ4)再生計画案の提出:申立日から3ヶ月
  • フェーズ5)債権者集会で再生計画案の決議・再生計画の認可:申立日より5ヶ月

 上記のように民事再生法は最短半年程度で認可される。不認可の場合は、破産手続きへ移行される。

 従って今回のスカイマーク民事再生に関する検討は、フェーズ1となる。更なるリストラを経て、フェーズ5をクリアすれば最終的に大幅な債務免除と、事業の存続が可能になる。

 それに対して会社更生法とは、民事再生法と同じ「破産法」に類する法律であり、経営困難である株式会社について、事業の更生を目的としてなされる更生手続を定めるために制定された法律である。

 会社更生法は、債権者数が多くその債権額も大きい比較的大規模な会社を想定して定められており、手続が非常に複雑で厳しいものとなっている。
 
 両者の相違点は以下になる。

  • (1)申し立ての可能な者:民事再生法→個人・法人問わず/会社更生法→株式会社に限る
  • (2)経営陣の処遇:民事再生法→現経営陣が原則続投可能/会社更生法→経営権は管財人、旧経営陣は刷新する必要あり。
  • (3)担保に関する権利:民事再生法→担保権行使不可/会社更生法→再建手続で処理可能
  •  会社を再建する趣旨は同じだが、民事再生法を選べる方が会社にとってはメリットが大きい。 

     これ以外にも会社更生法は、数年にも渡り多くの利害調整が行われるため、企業の再建に向けた動きが遅くなる場合もある。

     スカイマークが今回民事再生法を申請した背景には、民事再生法の機動性を活かして、早期の再生を望む思惑が見え隠れする。

     ただし「一部の債務免除」とは「言葉の良い踏み倒し」に当たるので、まずはミソギとしてトップの西久保社長が辞任し、その後就航便の更なる削減、従業員の削減、給与カット、経費削減案、売上アップのための具体策を債権者に提示する方策をとった。

     そのかわり、飛行機便数は現状で最大24便減数(全体152便)となるのみだ。当面の資金援助も投資ファンドのインテグラル社(東京)がバックに付く形となる。

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    民事再生法の適用がNGなケース

     民事再生法を適用されなかった近年の代表例は、和牛牧場の安愚楽牧場、ゲーム開発のインデックス、があげられる。

     これらの会社に共通しているのは、経営陣が経理の不正操作を指示したり、投資家を欺く行為を意図的に行っていたことだ。

     ただし、スカイマークは、これらの行為を行った形跡が今の時点で見当たらない。

     航空会社の第三番手で公共性の高い事業を行っており、投資ファンドインテグラルが資金援助の後ろ盾に付いているので、ミソギを済ませた今となっては、申請が認められる可能性は高い。

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