あるところに、Aさんという働き者のアルバイトさんが働くBという会社がありました。経営者のCさんも、ゆくゆくは彼を正社員にしようと考えています。ところがAさんとCさんはボーナスシーズンに大モメします。Aさんがアルバイトであるにも関わらず、「ボーナスをもらう権利がある」と迫るからです。なぜAさんはここまで激しく主張するのか?原因を探ってみましょう。
労働基準法で正社員と非正社員の区分は無い
多くの方はご存知かと思いますが、労働基準法上で「正社員」や「パートタイマー・アルバイト」に、明確な区分は定められていません。
正社員であろうが、パートタイマーであろうが、労働基準法上は皆同じ「労働者」としてくくられています。
国会でよく議員さん達が「パートタイマーのような労働者の待遇改善を!」と声高に叫んでますが、あの発言は、「パートタイマーという言葉に定義なんてないから、何かツッコまれてもぼやかせる」という算段も含まれていることでしょう。
このように、法律上で明確な労働者の区分はありませんが、便宜上の問題で、
- 期限の定めが無い労働者⇒正社員
- 期限の定めが無い労働者⇒非正社員
という形でわけられているのが現状なのです。
アルバイトさんからボーナス請求!なぜ!?
さて、貴方の会社には正社員以上に働き者な、非正規社員の方はいらっしゃいませんか?
これは、実際にあった事例なのですが、Aさんという働き者のアルバイトさんが働くBという会社がありました。
彼はアルバイトであるにも関わらず、仕事に対して非常に意欲的で、誰に言われることもなく営業までこなして、更には結果を残してくれる人材でした。
経営者のCさんも、ゆくゆくは彼を正社員にしようと考えています。
ところが、ボーナスシーズンの時期に彼がCさんに、いきなり食ってかかるようになりました。
「なぜ、これだけ頑張ったのに、私はボーナスがもらえないのですか?訴えますよ!」と、Aさんは頑として譲りません。
Cさんとしては、アルバイト待遇のAさんにも分け隔てなく接し、時給と社保、それに有給をきちんと消化させているため、何も問題が無いと思っていました。
しかも、ボーナス(賞与)は法律上、全ての従業員に平等に適用する必要があると定められたものではないため、より一層問題は無いと、Cさんも譲りません。
ところが1つだけ、Cさん(B社)には落ち度がありました。
皆さんは、何だと思われますか?
Cさんの落ち度を就業規則の大ポカに見つけた!
Cさん(B社)の落ち度、それは就業規則に不備があったことです。
B社の就業規則の冒頭には「就業規則は、雇用されている従業員全員に適用する」という文言があり、賞与の事項には「賞与は年2回従業員に支払われるものとする」と書いてあります。
最初にお伝えしましたが、労働基準法上では正社員と非正社員には明確な区別がありませんでしたよね。
もうご理解いただけたでしょうか?
B社の就業規則規定には、「従業員全員に賞与をもらう権利」が発生しており、Aさんはこの点を指摘していたのです。
就業規則は、会社のルールを明確にして、秩序ある職場を形成するために作成されるものですが、就業規則自体にこのような不備があると、かえってそれがトラブルの原因となってしまいます。
トラブルが起こってしまった場合、今回の事例のように、会社は非常に不利な立場に立たされてしまいます。
雛形から作った就業規則は必ず自社に合わせてカスタマイズしなければならない
なぜ、Bさんの会社でこのような不備が起こったかというと、彼の会社は、 インターネット上でダウンロードできる就業規則の雛型をそのまま使っていたのです。
従業員が10人を超えたところで、資金繰りもまだ苦しく、社労士の方にカスタマイズしてもらう余裕など無かった就業規則が、そのまま有効になってしまいました。
このような事態を防ぐためには、例外規定を必ず設ける必要があります。
たとえば、「賞与については正規従業員のみ適用する」などの例外規定をはっきり設けるといった形です。
今回の事例では、アルバイトのAさんが正社員になることを前提に、気持ちを切り替えてくれたおかげで、賞与の支払は正社員になった後から支払うことで、なんとか事態収束となりました。
ただ、同じようなことが自社の就業規則で起きていたら…と思うと怖いですよね。
もう一度、チェックしてみてはいかがでしょうか?