障害者雇用納付金が大幅に制度改定 人材確保のチャンス

補助金

 障害者雇用納付金制度が大幅改定される。制度の対象となる企業の範囲を広げるというものだ。短期的には障害者雇用が抱える現実的な問題を理由に、障害者雇用について否定的な意見を持つ企業も多い。しかし今後訪れる少子高齢化社会においては、障害者雇用は企業の貴重な人材確保手段となる。制度改定を前向きに捉えたい。

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障害者雇用納付金制度 今年から大幅改定

 障害者雇用納付金制度とは、昭和35年に制定された「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく制度である。

 平成22年7月の改正により、常時雇用している労働者数が200人を超え300人以下の事業主までを制度適用の対象とし、労働者数の2.0%以上にあたる人数の障害者雇用を義務付けている。

 平成27年4月の改正では、さらに適用の対象範囲が拡大され、100人を超え200人以下の常時雇用の労働者数がいる事業主においても障害者の雇用が義務化されることになる。

 制度の中身は以下のとおりである。
 
1)2.0%以上の雇用が達成できない場合
 不足する1人につき月額5万円のペナルティの納付義務が発生
2)2.0%を上回る障害者の雇用を達成した場合
 超えた人数1人につき月額27,000円を支給

 障害者雇用納付金制度は、これら報奨金や調整金を設けることで、障害者の雇用を促進するための施策となっている。

 適用対象となる事業主に対しては、平成22年7月1日から平成27年6月30日までの期間に限り、法定雇用者数が不足する場合の納付金を1人あたり月額5万円の納付金を月額4万円に減額する経過措置が取られている。

 今回の改正で新たに対象となる事業主に対しても、平成27年4月1日から平成32年3月31日までの期間、同じく月額4万円に減額されることとなる。

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制度改定の背景 現場で生じる問題と本音

 制度改正の背景は、障害者の雇用状況の改善の遅れによって「地域の身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用の促進を図る」ためとされる。

 しかし制度の主旨とは裏腹に、依然として企業の現場からは消極的な声も聞こえてくる。

 障害者雇用のハードルが高い理由として、良く耳にする意見は以下の通りだ。

1) 任せられる仕事が見当たらない

 事業主側が雇用を促進できない原因の一つに能力適正の問題がある。障害者雇用のために現在の組織機能、事業構造を根本から見直す事は現実的に難しいであろう。

2) 求める人材を確保できない

 会社が必要とする技術や能力を持つ人材の確保は常に困難だ。障害者雇用の場合においては、なおさらその傾向が強い。

3) 受け入れ準備ができない

 現在就業中の社員の理解を得る事はもちろん、建物や機材、設備など、物理面にかかるコストの問題もある。また、障害者にとって通勤時やオフィス環境で受ける負荷の有無は重要な要素であり、条件面でなかなかマッチしないのが実情である。

 制度とはいえ、「目に見える利益が期待できないものにコストはかけられない」というのが企業の本音だろう。

 実際、障害者雇用納付金を納付した方が結果的にリーズナブルだと判断する企業も一部に存在する程である。法定雇用人数を満たす目的で、障害者を一まとめにする組織を用意し、体裁を整える事業主も皆無ではない。

 しかし、そのような逃げ口上や一時凌ぎがそろそろ通用しない時期に来ている事が、今回の制度改正の背景から垣間見えてくる。

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制度改定は見方の変化で人材確保チャンスに

 障害者雇用納付金制度をCSR(企業が社会に対して責任を果たし、社会とともに発展していくための活動)の視点だけに捉われずに利用すれば、短期的な数字では計れないメリットが実はある。

 人材を確保する手段が新たに1つ増えることだ。

 企業の業績を左右する要因は、最終的には「優秀な人的リソースが社内にどれだけ数多く在籍するか否か」にかかっている。

 少子高齢化社会における労働力強化のための戦略として考えると、今後人材確保が困難になるのは明白だ。

 国の支援を受けながら、優秀な人材を探すという見方を持てば、特に中小企業にとって今回の制度改定がチャンスとなる。

 社内においても障害者雇用の促進は、トップメッセージの浸透、人材育成や相互協力など組織の活性化、企業文化の醸成、といったプラスの効果を生み出すきっかけとなりやすい。

 解決すべき課題は、(1)自社にマッチした人材の確保、(2)指導育成にかかる社員の負荷と理解、(3)ハンディキャップに対する十分な配慮、の3項目に関する方法論に絞られてくる。

 人材マネジメント・適材適所への配置など、本人の能力に鑑みた部分で、企業が負担すべき部分は通常採用と何ら変わらない。

 官民一体で社会保障と利益の追求をどのようにして両立させるか、真剣に考えるタイミングが来ている。

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