従業員が訳あり無断欠勤後に有給休暇を申請
有給休暇は労働基準法で定められている「従業員に与えられた権利」です。
入社後に6ヶ月を経過した後で一定の条件を満たせば、従業員には10日間の有給休暇が付与されるようになり、有給休暇がどのような目的で消費されようとも原則自由です。※
しかし、まれに有給休暇の消費に関する判断で困るケースが生じます。
たとえば、従業員が無断欠勤をした後で有給休暇を申請してきた場合が、それにあたります。
無断欠勤した従業員に、後日「なぜ無断欠勤したのか?」理由を聞いてみると、急病で寝込んでいて電話で連絡できなかったと言われ、その従業員が普段から真面目な勤務態度なら、それを貴方も信用することでしょう。
果たして、会社側はこのような場合でも、有給休暇を認めなければならないのでしょうか?
事後の有給休暇は認めても認めなくても良い
結論からお伝えすると社員が無断欠勤した場合は、この日を有給休暇として取扱う必要はありません。ただし、有給休暇として取扱うことにも問題はありません。
なぜ両方の立場で会社が対応することができるのかというと、従業員が有給休暇を取得するためには「ある要件」を満たす必要があるからです。
従業員は、有給休暇を好きな時期を指定して取得することができます。
これを「時期指定権」と言います。
それに対して、会社側にも業務に支障が出る場合は、前もって有給休暇の時期を変更する「時季変更権」が与えられています。
ところが、先程の事例で言うと、従業員は休暇を取った後になってから、自分の「時期指定権」を行使して有給を要求しています。
これでは会社側が時季変更権を行使できる時間がありません。
従って、従業員は有給休暇の取得の要件を満たさないこととなります。
有給休暇は、一見して社員有利の権利と思われがちですが、実際にはトレードオフの関係となっているのです。
従業員が有給休暇を取得するためには、事前に申請する必要があり、会社側は事後の申請に対して応じる必要が無いのです。
就業規則で事後の有給休暇申請にルールを定めよう
とはいえ現実問題として、今回のケースのような急病やあるいは重大事故のように突発的な理由で、事前に有給休暇の取得申請が出来ない場合もあります。
ところで法律的に、会社は事後に出された有給休暇の申請に対して応じる必要はありませんが、応じること自体は法律的に全く問題がありません。
もちろん、どのような場合においても、事後に出された有給休暇の申請に対して認めない、という対応でも良いですが、そうなると少し柔軟性に欠け、従業員のモラルや士気の低下にも繋がる場合も考えられます。
場合によっては、有給休暇の事後の申請に対しても応じる方が良い場合もあるでしょう。
ただし、どのような場合に事後の申請を認めるのか、基準となるルールを定めておく必要があります。
それらのルールは、就業規則の中に記載しておくことが望ましいでしょう。
なぜなら、事後申請を認める・認めないの明確な基準が無いと、その都度対応が必要になり、従業員間に不平等が起こってしまう場合も考えられるからです。
これらを踏まえた上で、有給休暇の事後申請について制度設計を考えてみることをお勧めいたします。
※労働時間や出勤日数が短い従業員の場合は、労働時間及び出勤日数に応じて比例付与されます。