パートタイマーやアルバイトで、会社にとって十分な戦力として働いてくれる方が、貴方の会社にもいるのではないでしょうか?ところが不況の煽りを受ける等して、やむを得ずこのような方達に雇用期間の満了を理由に辞めてもらわねばならぬ時、その主張が通らない場合があります。どうしてそのようなことが起こるのか説明します。
パートタイマー・アルバイトと労使トラブルになりやすい「雇用期間」の問題
パートタイマーやアルバイトに対する一般的なイメージといえば、
- 正社員と比べて「1日の労働時間が短い」
- 「1週間の出勤日数が少ない」
というものですよね。
確かに、このイメージ自体は実態と比較して、決して間違えたものではありません。
ただし、1日の労働時間の長短や1週間の出勤日数自体は、事業主も労働者も合意の上で働くため、トラブルの原因となることも少なかったりします。
パートタイマーやアルバイトと会社の間で、最も労使問題となりやすいのは、雇用期間の問題だったりします。
雇用期間の定めを設けないと労働力の調整が困難になる
通常、会社がパートタイマーやアルバイトを雇用する場合は、最初に雇用期間を設定します。
もし仮に、雇用期間について特別な定めをしなければ、「雇用期間の定めのない労働契約を締結したもの」と解されます。
会社がパートタイマー等を正社員同様、長期的な視野で雇用するなら雇用期間に定めを設けなくても問題はありません。
ただし、雇用契約の定めを最初に設けなければ、例えば不況の煽りを受けて仕事量が減少した際でも、雇用期間満了を理由として労働契約を終了させることは出来なくなります。
パートタイマーやアルバイトを雇用する際に、労使トラブルを発生させないためには、雇用を決めた時に、契約上必ず雇用期間を定めるようにしましょう。
馴れ合いの雇用契約更新は後々でトラブルのもとになる
パートタイマー等の雇用に関してトラブルの原因となる2つ目の火種は、「雇用契約の更新を行う度に契約書を更新しない」ことです。
多くの企業では、パートタイマー等の雇用に関し中長期的なものと考え、パートタイマー等に重要な役割が与えられているケースがあります。
店舗経営をしている場合だと、店長さんがアルバイトやパートタイマーというのは、よくある話です。
このような場合、馴れ合いの関係により、労働契約に期間の定めがあっても、それを紙面上で契約更新しない場合があります。
しかし、契約が「事実」として反復更新されることで、労働者は会社でずっと働き続けることができると期待します。
この場合、労働契約に期間が定められていても書面上で契約の更新を行わず、事実として契約が更新されていると、事実状態が優先されてしまいます。
こうなると、単に雇用期間満了で労働契約を終了させることは出来ず、解雇の場合と同じく、労働契約の更新を拒絶するには正当な理由が必要となります。
つまり、労働契約を反復更新することによって、パートタイマー等は会社内での扱いはパートタイマー等であっても、雇用期間に関しては正社員と同じ法律の適用を受けることになるのです。
反復更新された雇用契約が「期間の定めなし」と判断される場合
反復更新された労働契約が、期間の定めのない労働契約と同視できるようになったかどうかは、
- 業務内容が臨時的なものか
- 通算の雇用期間
- 他の従業員等における更新状況等
から判断して、制度として更新が当然のように行われてきたか?をチェックした上で判断されます。
また、平成16年の労働基準法改正により、期間の定めがある労働契約を締結する場合は、
- 契約更新の有無
- 契約を更新する場合又は更新しない場合の判断基準
を明示する必要があります。
このような観点からも、契約更新時に改めて労働契約を締結することをせず、いわゆる自動更新の形で労働契約が更新されているような場合は、期間の定めのない契約とみなされる可能性が極めて高いと言えます。
従って雇用期間の長さにかかわらず、契約期間が満了し契約を更新する場合には、必ず改めて雇用契約書を交わす必要があります。
契約更新ごとに雇用契約書を交わしておけば、何らかの事情で労働契約を終了させたい場合に、契約期間満了で労働契約を終了させることが可能になります。
契約更新ごとに雇用契約書を交わしていても、契約更新回数が多くなれば、期間の定めが無い契約とみなされてしまいます。
また、近年、労働契約法が改正され、期間の定めがある契約が繰返し更新され、通算で5年を超えた時には、労働者の希望により雇用期間の定めが無い労働契約に変更できる等、雇用期間の定めが設けられました。
労働者を保護する動きが高まっているので、パートタイマーやアルバイトの方と雇用契約を更新する際は、必ず「雇用契約書」を更新し押印をもらっておきましょう。