既に内定者研修を始めている企業も多いようですが、内定者研修を実施することになったとき、費用は誰が負担するべきなのでしょうか?内定者と会社の間では「解約留保権付雇用契約」が既に結ばれている状態ですが、雇用関係に準ずる者であるため、考え込む方も多いようです。そこで本稿は、内定者研修にかかる費用負担を誰が行うべきか解説します。
内定者と企業の関係「解約留保権付雇用契約」
もう既に、2019年の新入社員達の教育活動を始めている方もいらっしゃることでしょう。
ところで、内定者研修を実施することになったとき、費用は誰が負担するのか考え込んでしまったことはありませんか?
というのも「内定者研修」の対象者となる人=内定者というのは、雇用関係に準ずる者と考えられます。
もう少し細かく言うと、内定通知が会社から出されたことで、「解約留保権付雇用契約」が既に結ばれている状態です。
この微妙な前提、いわば「婚約状態」のような関係において、内定者研修の費用は、会社が負担するべきなか、個人が負担するべきなのか? 今日は、そんな疑問にお答えします。
内定者研修の実費は誰が負担すべきだろうか?
さて、内定者研修にかかる費用として一般的に考えられるものには、
- 研修の実費
- 交通費
- 賃金
などがあります。
研修の実費には、テキスト代、外部から講師を招く場合の講師代、コピー代などが含まれます。
交通費については、自宅から研修会場までの旅費、研修時間分の賃金(日当ではありません)の支払いが必要かどうか?という部分が焦点となります。
原則として内定者に入社前研修に参加する義務はない
大原則として、実際の入社日以前(業務開始日以前)に、内定者が会社からの業務命令に従わなければならない義務はありません。
ですから、内定者が入社前の研修に参加する義務はないとも言えます。
ただ、通常は特別の事情がない限り、内定者が内定者研修を欠席することは事実上困難です。
会社側には、「すぐに辞めてしまうかもしれない人の研修費用を支払いたくない」という気持ちもあるようですが、実際にはどのようにすれば良いのでしょうか。
内定者研修の性質により判断
ポイントになるのは、その内定者研修がどのような性質の研修かということです。
内定者研修の性質が、会社の指示による強制参加によるもので、本人が得られる利益が小さく、業務との関連性が強ければ会社の負担です。
ちなみに、不当な研修費用の返還の約束は、労働基準法第16条(損害賠償額の予定の禁止)の違反になります。
ただし、この労働基準法第16条に触れるかどうかは契約の内容や、使用者の意図、労働契約の内容や本人が得られる利益などを含め総合的に判断されます。
内定者研修の交通費は会社負担?個人負担?
次に、内定者研修の際に交通費が誰の負担になるか?という点について解説します。
先述の通り、採用を予定されている内定者は雇用関係に準ずる者です。
内定者側から交通費の支給の有無については聞きにくいと思われますので、内定者研修の案内を出す時点で、交通費は会社負担であることを伝えておくと親切でしょう。
内定者研修にかかる費用~研修に賃金は必要?
そして、これが最大の争点となるのですが、内定者が研修に参加する際は、賃金を発生させる必要があるのでしょうか?
この場合の賃金は、入社日以降の賃金の2日分ではなく、実際の研修時間分のみの支払いで大丈夫です。
支払いの時期に関しては、会社の支払い規定に従ってください。
また、この内定者研修に参加する者に関しては、内定通知が会社から出されたことで、解約留保権付雇用契約が既に労使で結ばれている状態ですから、新たな契約は不要です。
余談ですが、もし内定者研修の際に事故などで内定者が負傷してしまった場合には、労災保険が適用されます。
労災保険は、個々の労働者に対して加入手続きは不要ですので、新たに特段の加入手続きをする必要はありません。
万が一、事故などが遭った場合には、速やかに労災の手続きなどを取って、労働者に不利益のないようにご対応ください。
以上、内定者研修にかかる費用について解説してまいりました。
内定者研修の費用をだれが負担するのか?というのは、その研修の性質を総合的に勘案して決める必要があります。