外部の方を接待する際は、お店への移動や送迎に、何かとタクシーを使うことが多くなります。ところで、接待時に利用するタクシー代は、旅費や交通費、交際費のどちらで計上すれば良いのでしょうか?曖昧な回答となりがちな疑問も、定義を振り返ることで明快に答えることが可能になります。
接待時のタクシー代、費目はどう処理する?
忘年会シーズンに突入していますが、接待を兼ねた忘年会を企画している方もいることでしょう。
外部の方を接待する際は、お店への移動や送迎に、何かとタクシーを使うことが多くなります。
さて、接待時に利用するタクシー代は、旅費や交通費、交際費のどちらで計上すれば良いのでしょうか?
旅費・交通費・交際費の定義をおさらいしよう
結論から言うと、接待時に利用するタクシー代は、交際費で計上する必要があります。
接待時のタクシー代を、うっかり旅費や交通費として精算してしまうと、税務上は間違いとなります。
接待にかかる一連の行為は、「一つの案件」とみなされるため、タクシー代も接待費として計上しなければならないのです。
それは、両者の定義をみることで理解できます。
旅費・交通費の定義
まずは、旅費の定義から見ていきましょう。
No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い
[平成28年4月1日現在法令等]
国内の出張又は転勤のために、役員又は使用人に対して支給した出張旅費、宿泊費、日当については、支給した金額のうちその旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れになります。
ただし、海外への出張又は転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入れになりません。
また、事業者が使用人等に支給する通勤手当(通勤定期等の現物による支給を含む。)のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、その全額が課税仕入れになります。
(消基通11ー2ー1、11-2-2)
旅費は基本的に内部の人間が使用するものと認識されています。
また、交通費について見てみると、
No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
[平成28年4月1日現在法令等]
役員や使用人に通常の給与に加算して支給する通勤手当は、一定の限度額まで非課税となっています。
となっており、こちらも社内の人間について適用される費用と認識されているのです。
つまり、旅費・交通費は接待を行った時の費用として、いずれも計上できないことになります。
交際費の定義
対して、交通費はどうでしょうか?
No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
[平成28年4月1日現在法令等]
1 交際費等の範囲
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出する費用をいいます。
得意先、仕入先など、外部の人間を接待するために供した費用を指すとされています。
つまり、接待で利用したタクシー代は、交際費として計上することが正しいと言えるでしょう。
各経費項目の定義をおさえて上手に利用しよう
このように、それぞれの勘定項目について正しい定義を把握すると、同じタクシー代を支払うにしても、接待費と旅費交通費のどちらに仕訳するか全く変わります。
なお、平成25年度には、中小企業における交際費の税務上の取り扱いに関する税制改正が行われました。
資本金1億円以下の法人においては、交際費の定額控除限度額が年600万円から年800万円に引き上げられ、定額控除額に達するまでの損金不算入額は0円となっています。
この金額範囲内で上手に計算すれば、タクシー代も交際費に計上することが可能です。
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