商標登録の取得コストを節約する「範囲」と「時期」の上手な決め方

知財

 自社が優れた商品・サービスを持っている場合、あれもこれも商標登録を行いたくなるものです。しかしながら、権利範囲とコストの間にはトレードオフの関係があり、全ての範囲で商標登録しようとすれば、コストが高くつきすぎます。そこで本稿は、商標登録のコストを抑えるための、上手な権利範囲の決め方をご紹介いたします。

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あれもこれも商標登録するとコストがかかる

 商標登録を検討する場合、どの商品・サービスについて商標登録を行うか?という検討が重要になります。

 事業で使用する商品名・サービス名を守るのが商標登録ですから、事業でどの商品・サービスについて商標を使用しているかを特定することは、商標登録を行う上で必須であり、ここは当然の検討事項になります。

 しかし時に、権利範囲とコストがトレードオフの関係になることも少なくありません。

 商標登録では、申請する区分の数が増えるとコストが増えます。

 このため、事業で取り扱っている商品・サービスが多く、権利範囲をしっかりと確保しようとすると、コストもそれなりにかかることになります。

 権利範囲とコストがトレードオフの関係になってしまう場合、すなわち、予算の関係で権利範囲を取捨選択しなければならない状況である場合は、どの商品・サービスを商標登録の範囲から除外するかを検討しなければなりません。

 これには2つのパターンがありますので、ご紹介しようと思います。

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商品・サービスが1つの区分に属している場合

 第1のパターンは、現在事業で取り扱っている商品・サービスが1つの区分に属し、関連する商品・サービスが他の区分に属している場合です。

 例えば、現在はソフトウェアの商標として使用しているが、将来はクラウドサービスの商標として使用する可能性も考えられるので、クラウドサービスについても商標登録を取得しておいた方が望ましい場合です。

 これら商品・サービスをすべて含む商標登録を行うと、区分の数が「2」になります。

 このとき、1区分の分しか予算が割けない場合、どうするかが問題となります。

 しかし、これはさほど悩む問題ではなく、当然、現在使用している商品・サービスについて商標登録を取得することを優先すればよいのです。

 関連する商品・サービスについては、リスクはあるものの、時期を空けて予算が確保できる段階になったら取得するというやり方をとります。

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商品・サービスが2つの区分に属している場合

 ところが、次のパターンはそう簡単ではありません。

 第2のパターンは、現在事業で取り扱っている商品・サービスが2つの区分に属している場合です。

 例えば、現在、ホテルとスパ施設を経営し、それらの商標として使用している場合です。

 これら商品・サービスをすべて含む商標登録を行うと、区分の数が「2」になります。

 このとき、1区分の分しか予算が割けない場合、どうするか。

 商標を使用できなくなる可能性と、商標を使用できなくなった場合の損失を分析し、どちらの区分を優先するかを決めていく必要があります。

 商標を使用できなくなる可能性については、例えば、その商品・サービスの区分で商標登録がどれぐらい取得されているかという点を検討します。

 商標登録の件数が多ければ、商標を使用できなくなる可能性が高まるからです。

 また、商標を使用できなくなった場合の損失については、売上げや利益の規模、顧客への認知度、販促物を刷新する場合の費用などを検討します。

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優先順位と時期を空けることでコストを抑える

 このような検討を経て、優先順位を決め、時期を空けて2つの区分について商標登録を取得していけば、商標登録のコストは安く抑えることが可能になります。

 また、このような検討を経ることでリスクが明確になるので、商標登録の費用対効果を正確に評価でき、1区分の分しか予算が割けないという前提を変更する選択肢も最終的に検討することが可能になります。

 もし、商標登録をご検討の際は、以上をご参考にされることをお勧めいたします。

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弁理士 渡部 仁

新卒で特許事務所に勤務し、生粋の知的財産専門家として20年以上の実務経験を有しています。
2009年に現在の特許事務所を鎌倉に設立し、特許・商標・著作権を専門として地元企業の支援に力を入れています。また、IT・ソフトウェア・ビジネスモデルの特許に強く、特許権の侵害訴訟や外国での特許取得も取り扱っています。
鎌倉商工会議所専門相談員、知財総合支援窓口知財専門家などに従事し、地域の中小企業や行政に対する公的な支援にも数多く携わっています。

知的財産権は、事業を守るだけに止まりません。活用の仕方によって利益を上げる武器にもなり得ます。
すべてのお客様が知的財産を活用して利益を上げ、事業を大きく発展させるという目標に導くことこそが私の使命です。
人との信頼、関わり合いを大切にし、情熱をもって誠実な仕事を心がけて参ります。
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経営者の皆様へ
私たちは、知的財産活用の知識をもつ特許事務所です。
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地元企業とのつながりが密接であることから、鎌倉で活躍する企業が具体的にどのような取り組みを行ったか、その取り組みのなかで知的財産をどのように手当てしてきたか、どういう取り組みが成功事例につながり、どういう取り組みが失敗事例につながったのかなど、ビジネスで使える知的財産活用の知識を有しています。
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このことが、結果として、知的財産を活用してお客様の利益を高めることにつながると考えているからです。

【資格】
弁理士 特定侵害訴訟代理人
第一種電気通信主任技術者
情報処理技術者

【公的な役職 2016年6月現在】
鎌倉商工会議所専門相談員
横須賀市商工相談員
知財総合支援窓口知財専門家
神奈川県特許等取得活用支援事業知財専門家
島根県特許等取得活用支援事業知財専門家
川崎市中小企業サポートセンター知財専門家
神奈川産業振興センター知財専門家
神奈川県商工会連合会知財専門家
日本弁理士会関東支部神奈川委員会副委員長
日本知的財産仲裁センター事業適合性判定人候補者
日本知的財産仲裁センター調停人・仲裁人補助者候補者

【主な講演実績】
2014年 かわさき知的財産スクール 講師
2015年 かわさき知的財産スクール 講師
2015年 経済産業省・特許庁主催の知的財産セミナー 講師
2016年 かわさき知的財産スクール 講師
2016年 神奈川県ものづくり技術交流会 IoTフォーラム招待講演 講師
2016年 経済産業省・特許庁主催の知的財産セミナー 講師

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