味の素が「Blendy」、「MAXIM」などの商標権を、オランダのジェイコブズ・ダウ・エグバーツ社から、259億円で取得すると報道されています。
報道は同社がこれにより、マーケティングの観点で自由度が高くなることにフォーカスしていますが、実際にはもう一つの狙いがあると推測できます。
それは、節税を兼ねた高度なM&Aを実現することです。
味の素が259億を出して“Blendy”の商標を取得
味の素が「Blendy」、「MAXIM」などの商標権を、オランダのジェイコブズ・ダウ・エグバーツ社から、259億円で取得すると報道されています。
これまでは、同社から商標権使用許諾を得て、味の素が実際にはBlendyビジネスを遂行しているものと思われます。
記事では今回の商標権取得により、「製品展開などの制約がなくなるため、自由なブランド戦略を展開することが可能になる」としていますが、これは当然の話と言えます。
しかし私は、今回の商標権取得には、味の素にもう一つ意図があると考えています。
味の素による商標取得はM&A手法の1つである
なぜ味の素は商標権の取得に、259億円ものお金を出したのでしょうか?
私はこれを、M&Aの1つと見ています。
味の素は既に、Blendyビジネスを実行しており、人や工場設備、得意先の開拓に、大きな投資があまり必要ありません。
通常のM&Aでは、これが必要なため、会社全体を株式譲渡で買収したり、必要なビジネスを事業譲渡によって取引します。
ここで悩ましいのは、株式譲渡による投資金額は、損金にならないことです。
従って、オランダの会社を真正面から大金を叩いて買っても意味がありません。
259億円の対価が妥当かどうかは、情報が不足しているため、ここでは評価できませんが、商標権については、10年間で償却が可能で、税務上損金になります。
利益がでていることを前提にするとその分、節税が実現されるのです。
節税対策も兼ねた商標取得は高度なM&A手法である
味の素は、今回の商標権取得にあたり、当然この節税効果も考慮した上で動いたはずです。
目立ちませんが、かなり考えられているM&Aの1つと見て良いでしょう。
上級者が行う、高度なM&Aの1つとして、皆様にもぜひ知っていただければと思います。
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