厚生労働省の有識者検討会は、民間の職業紹介事業者に対して、募集条件に虚偽の記載がある求人を出した企業と幹部に、懲役刑を含む罰則を設けるべき、という趣旨の報告書を提出しています。特に年間休日の記載は大きな誘引となるため、間違えが命取りになります。変形労働時間制の企業はもともと年間休日の計算に間違えが生じやすいため注意が必要です。
求人の年間休日記載で虚偽記載には今後罰則
求人を出す際は、なるべく魅力的な内容を記載したいと考える経営者が多いことでしょう。
確かに募集内容の中でも、年間休日が何日あるかは、求職者にとって大きな関心事となります。
採用をする側の企業もこれをわかってますから、なるべく背伸びして「出来るできないは関係なし」に、休日を多めに記載するところもあるようです。
ところが、厚生労働省の有識者検討会は今年の6月に、ハローワークはもちろん、民間の職業紹介事業者に対して、募集条件に虚偽の記載がある求人を出した企業と幹部に、懲役刑を含む罰則を設けるべき、という趣旨の報告書を提出しました。
つまり、今後は、実態に応じて、正しい年間休日の日数を記載しなければ、お縄を頂戴する可能性が生じているということです。
特に今後の計算に注意してほしいのが、年間休日の計算が狂いやすい、変形労働時間制を導入している企業です。
変形労働時間制度とはどんな制度かおさらい
労働基準法では、法定労働時間が、1日8時間、1週間40時間以内と定められています。(一定規模以下の特定の業種に関しては、44時間)
所定労働時間が1日8時間の場合には、法定労働時間である1週間40時間を超えないよう、完全週休2日制を設ける必要があります。
しかし、多くの企業は「完全週休2日制を導入するのが困難」という実態を抱えています。
そのため、月又は年を単位にして、平均して1週間の労働時間を40時間以下にする、という変形労働時間の制度が定められています。
変形労働時間制は、週休2日制は取れない場合でも、年末年始休暇やお盆休暇等の休日を加味して、1年間を平均して1週間の労働時間を40時間以下にする制度です。
代表的なところだと、ホテルやスーパーマーケットなど、365日体制で運営される企業で、変形労働時間制が導入されています。
変形労働時間制でも年間休日は最低85日の実態が必要とされる
変形労働時間制度の中でも、多くの企業が利用しているのが1年単位の変形労働時間制です。
この制度は、週休2日制は取れない場合でも、年末年始休暇やお盆休暇等の休日を加味して、1年間を平均して1週間の労働時間を40時間以下に抑える制度です。
変形労働時間制を導入している企業が満たすべき年間休日を計算すると、所定労働時間によって年間休日として必要になる日数は、以下のように変わります。
- 8時間の場合:105日(閏年は106日)
- 7時間45分の場合:96日(閏年は97日)
- 7時間20分の場合:85日(閏年は86日)
ここで注意が必要なのは、1年単位の変形労働時間制の場合には、年間の労働日数に上限が設けられていることです。
具体的には、280日が上限の労働日数となります。
逆に言えば年間休日は、85日(閏年は、86日)が最低ラインとなります。
例えば、所定労働時間が7時間の場合には、必要な年間休日が67日となり、1週間の平均労働時間が40時間を超えませんが、280日を超えて労働させることは出来ません。
つまり、年間休日は、85日(閏年は86日)、月に換算すると7〜8日以上の休日が必要となってきます。
求人票に85日と記載があるのに、実態として年間休日が67日しかない場合は、罰則の対象となる可能性があります。
1年単位の変形労働時間制の場合には、このようにして年間休日を計算することとなります。
なお、1年単位の変形労働時間制を導入するには、従業員代表との書面による労使協定及び協定届等を、労働基準監督署に提出する必要がありますので、この点も注意が必要でしょう。