せっかく時間とお金、そして手間をかけて自社が開発した技術やサービスをライバルに真似されるのは、あまり気持ちの良いことではありません。しかし、自社の権利を勝手に使われていることがわかっても、すぐ訴訟を起こすことは、自社の立場をかえって危うくする場合があることを認識しなければ経営は傾いてしまいます。
自社の権利をパクられるのは気持ち良いことではない
弁理士という職業柄か、私のもとにはいつも、「他人が自社の権利を勝手に使っているみたいなので対応について相談したい」という依頼が舞い込んできます。
せっかく時間とお金、そして手間をかけて自社が開発した技術やサービスをパクられるのは、正直な話をすれば気持ちが良いものではありません。
すぐにでも訴訟を起こして、相手をこてんぱんにしたいという気持ちも当然です。
しかし、自社の権利を勝手に使われていることがわかっても、ジャイアンのようにすぐ拳を振り下ろすのでは芸がありません。
ビジネスは緻密な戦略のもとに、戦術を実行しなければならないからです。
自社の権利を勝手に使われている場合に踏むべき4ステップ
もしも自社の権利を勝手に使われている場合、私がお勧めしているのは4つのステップを踏んで、その事態と対峙することです。
- 第一段階:今しばらく様子を見る
- 第二段階:相手に自社の権利内容を伝え、解決に向けて交渉する
- 第三段階:相手に警告をする
- 第四段階:訴訟を提起する
というステップです。
「何を弱腰な」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、特に訴訟を提起する場合には、よほど周到な準備をし、資金も準備しておかねばなりません。
知的財産に限らず、相手に対して「許せない!訴えてやる!」とばかりに、勢いに任せて訴訟を起こすことは、決してあってはなりません。
なぜなら、振り上げたこぶしは必ずおろさねばならず、本気で訴訟を起こすのであれば、その前に準備すべきことは多々あるからです。
交渉前に経営者が決めておくことの一つに「落としどころを決めておく」ということがあります。
訴訟の場合も同じです。
最終的にどういう着地点(勝訴の場合、損害額は?万が一敗訴の場合、次にどうするか?等々)を設定するか決めなければ、費用と時間だけを浪費し、結局勝てる訴訟も負けることになってしまいます。
また、勝ったとしても、訴訟にかけた費用に対して、勝ち取った権利の価値が低いならば、それは事実上の負けとなってしまいます。
訴訟で勝つことだけが自社の権利を守ることとは言い切れない
訴訟に強い会社は、このような準備を徹底的に行っています。
読者の皆さんも、もし訴訟を考えるような事案が発生したら、その前に何をどうすべきか、誰に相談すべきか等々、冷静になる時間を作ってください。
決して訴訟だけが、自社の権利を守る上で解決策ではないことを、ぜひ覚えておいていただければと思います。
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