副業禁止 社長と社員はどう折り合いをつけるべき?

労務

 航空自衛隊の隊員が副業で2,000万円を稼いでいたことを理由に、懲戒処分をくだされた。企業の場合は、「就業の自由」に鑑み、副業が発覚したからと言って経営者は簡単に社員を解雇出来ない。ではどのような場合に副業で社員は解雇できるのだろうか?今後、副業禁止の規定はどうあるべきかについても触れながら解説していきたい。

スポンサーリンク

自衛官が15年で2,000万円の副業で懲戒処分

 航空自衛隊の浜松基地は、2月25日(水)、同基地所属の男性空曹長(50代)が、不特定多数の人から広く悩み事の相談を受け報酬を受け取ったことを受けて、停職40日の懲戒処分を発表した。

 同自衛官は「生活に困ってやっていた」と回答しており、15年で総計約2,000万円の報酬を受け取っていたという。

 2009年には、航空自衛隊三沢基地で女性隊員(当時26歳)が派遣型風俗店でアルバイトをしていることが発覚し、依願退職させられている。

 自衛官は国家公務員であり、副業を「原則として禁止」される立場(地方公務員法38条・国家公務員法104条)にあるため、これらの事件は大々的にニュースとなる。

 日本では公務員はもちろんのこと、企業の80%以上が副業禁止もしくは制限規定を設けている。※1

 なぜ副業はこれほど制限されるのだろうか?

スポンサーリンク

副業禁止規定 いきなり懲戒解雇はできる?

 社員に対してなんら制限のない副業を解禁すると、経営者は多大なリスクを持つことになる。

 記憶に新しい2014年初めに起きた東芝事件では、半導体メモリに関する研究データが、ライバル企業へ不正流出した。これは東芝・元社員がライバル会社へ転職したことで発覚したが、技術情報、知的財産の流出は個人情報の流出と同様、企業にとって大きな痛手となる。

 勤務時間内の副業により業務効率が阻害されたり、副業が外部で発覚した場合に会社の風評が悪くなる可能性も生じる。

 とはいえ副業が発覚したからと言って経営者は簡単に社員を解雇出来るのだろうか?

 答えは「否」だ。憲法22条により、日本国民には「就業の自由」という権利が認められているからだ。

 従って、会社が労働者の行動を制限できるのは、業務による給与発生がある勤務時間の間だけというのが通念となっている。

 労働基準法でも「副業に関して企業が規制をかける権利がある」という記載は一切無く、時間外に働くことを頭ごなしに禁止することは過去の判例を見ても勝訴する例が少ない。

 では、どのような副業を社員がした場合に、解雇が妥当となるのだろうか?

 勤務時間外にキャバレーで会計係等として就労していた原告が解雇された、小川建設事件(労働判例397号)の判例※2が参考になる。

 当裁判では「時間外の兼業禁止は特別の場合を除き、合理性を欠く」としつつ、「業務終了後の時間は翌営業日の誠実な業務のために疲労回復へつなげる時間」であり、「兼業の内容次第では会社の対外的信用が傷つく」ことを認め、「会社に無断で兼業を行ったこと」は「雇用契約上の信用関係を破壊する行為」として、解雇を認めている。

 よって、会社に無断で、公序良俗違反となるような兼業を、実務に影響があるような方法で行っていた場合は、解雇が有効となる可能性が大きくなる。

 「深夜遅くまでキャバクラやコンビニエンスストアで副業し、翌営業日に遅刻、居眠りすることが常態化している」などの場合、会社から注意勧告を受けても副業をやめないと、解雇の要件は十分に満たされる。

スポンサーリンク

副業禁止は終身雇用・年功序列の残り香

 アメリカでは副業のことを「ムーン・ライティング(moon lighting)」といい、会社員はもちろん公務員にも副業が認められている。2~3の仕事を掛け持つことは当たり前で、フェイスブックやグーグルといった企業も副業を禁止していない。

 企業内の役割分担が明確でリストラが簡単であり、重大な技術情報を見知る機会のある従業員が限られ、なおかつ「個人を尊重する文化」があることが大きな理由だ。

 日本とアメリカの「副業」に関する考え方の違いは、日本が長きにわたって守り続けてきた、終身雇用・年功序列の残り香と言えよう。

 しかし今は個の時代、闇雲に副業を禁止してしまうと、優れた人材が別の会社へ出て行ってしまう危険性がある。

 副業を全面的に許可することは難しくても、複数の除外条件を設けることで情報漏えいを防ぎながら、従業員の労働意欲やキャリアアップにつながる副業を認めていく、認可・許可制を就業規定に入れていくことが、才能ある人材を得る手段の1つとなっていくだろう。

参照元

※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構「就業構造基本調査」
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/documents/041_00.pdf

※2 全基連 「労働判例397号」
http://www.zenkiren.com/jinji/hannrei/shoshi/00839.html

労務
シェアする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
編集部

起業、経営を応援するWEBマガジン編集部です。

編集部をフォローする