最低賃金の上げ幅は過去最高でも素直に喜べない2つの理由

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 7月に出揃った各都道府県の最低賃金平均額の改定額において、全国平均で過去最大の25円の賃金上げ幅が実現し、時給823円(平成27年度は798円)となったことが厚生労働省から発表されています。10月からいよいよ賃金引き上げとなりますが、働く人にとっても雇用する側にとっても、今回の賃金ベースアップが素直に喜べない2つの理由があります。

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最低賃金平均額が史上初めて800円を上回る

 7月23日に各都道府県の最低賃金平均額の改定額が出揃い、全国平均で過去最大の25円の賃金上げ幅が実現し、時給823円(平成27年度は798円)となったことが厚生労働省から発表されています。

 全国の最低賃金が800円を突破するのは、史上初めてのことで、東京都は907円、もっとも低い賃金の沖縄でも693円となっています。

 これらは最低賃金であることから、実質的に時給700円以下の求人は、基本的にモグリと見なされることになります。

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賃金は上がったのに素直に喜べない2つの理由

 安倍政権としては、今回の最低賃金底上げによって、低所得者も含めて低迷する日本全体の消費を拡大したい意向をもっています。

 しかし、実際のところは勤める側にとっても雇用する側にとっても、素直に今回の改定を喜べない事情があります。

 ご紹介しましょう。

最低賃金で働いても年収は160万円程度

 最低賃金平均額823円でフルタイムの8時間労働を月に20日行ったところで、年収は1,580,160円、つまり160万円に満たないのが現実です。

 この160万円という数字はフルに働いた場合の話であり、実際のところは現在100万円から130万円で働いている所得層、つまりパートの主婦やアルバイトの学生には大きな賃金上昇効果をもたらしません。

 今回の賃金上昇で恩恵を受けるのは、今回の賃金引き上げを武器に労組交渉ができる中間所得層であることがわかります。
 
 更に、日本国民全体の賃金支払が今回の賃金上昇では1,000億円増えると言われていますが、日本の労働人口約6,500万人で割れば年間1,500円程度。

 月給が10万円から10万1500円に増えたからといって、車を買わなかった人が車を買うようになることはありません。

企業が継続する賃金上昇に耐えられない

 人件費は企業が負担する固定費の中でも一番高く付く費用です。

 7月の参議院選挙では、最低賃金を時給1,000円まで底上げすることを公約に掲げる政党が目立ちましたが、これは果たして現実的といえるでしょうか?

 経営者ならば、固定費における人件費を20%UPさせることが、会社全体のコストにどのような影響を与えるか考えるだけで青ざめるはずです。

 仮に国内企業の売上1,000万円、粗利200万円が平均で、今まで100万円を人件費に使っていたならば、人件費を120万円に増やさねばなりません。

 人件費への収益分配率を50%で維持するためには、日本国内の全企業が粗利を240万円に上げる必要があります。

 ところが、業績回復傾向にあると言われた平成26年時点でも日本の企業の66.7%は赤字です。

 賃金上昇が続けば、現実には多くの企業が淘汰されざるを得なくなり、結局消費の落ち込みにつながります。

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「魚」を与える効果は限定的。「釣りの仕方」を裾の尾広く教える教育の仕組み作りを

 賃金の圧迫による淘汰を防ぐために、いずれ企業経営者は必ず防衛策を打ってきます。

 それは、徹底した作業のオートメーション化や人工知能ロボットを使った「コモディティ化された業務しか出来ない人間の必要ない会社」作りです。

 確かに最低賃金の引き上げは、消費の拡大につなげ、景気を上昇させるために必要不可欠な対策です。

 しかし、このような政策により掛かるだけでは、アベノミクスが示す「民間投資を換気する成長戦略」は実現し得ません。

 創造性の高い職業に多くの人が付くべく、社会全体の教育水準を底上げするチャンスを設けなければ、賃金の底支えも穴の空いたじょうろのように意味がないものとなってしまいます。

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