日本国内における経営者の平均年齢が、昨年遂に60歳へ到達しました。「60代はまだまだ働き盛り」という主張にも一理ありますが、それでもやがて事業承継を真剣に考えねばならぬ時は近づいています。ところが日本国内の事業承継は遅々として進んでいません。事業承継が進まぬ3つの理由を提示いたします。
経営者の平均年齢は遂に60歳突破も事業承継は遅々として進まず
昨年、ついに日本国内で経営者の平均年齢が60.8歳に到達し、過去最高を更新しました。※1
経営者の年齢分布は、70代以上の構成比がこの5年で顕著に上昇する一方、30代以下の社長の全体における比率は低下の一途を辿っています。
一方で、今後10年間で約半数の経営者が引退期にさしかかるにも関わらず、事業承継に向けた具体的取組に着手している企業は3割弱しかありません。※2
これらが示すのは、「日本国内で事業承継が遅々として進んでいない。」という事実です。
そこで本稿は、なぜ事業承継が国内で進まないのか?3つの理由を提示いたします。
日本国内で事業承継が未だ進まぬ3つの理由
1)経営者に「残り時間は少ない」という自覚がない
多くの経営者は60歳が「まだまだ若く、これからしばらく経営が可能だ」と考えている場合が殆どです。
たしかに一理あるのですが、事業承継は自社の希望のみで成立するものではなく、相手(買い手)あって成り立つものであり、1-2年間で完結しないことも多いものです。
早い段階で事業承継を検討し、幅広く情報を集めて行動し始めなければ、時間切れになってしまいます。
2)事業承継に対する準備不足と知識不足
社長の事業承継に対する準備不足、知識不足というのも大きな原因としてあげられます。
例えば、親族内承継ではなく、親族外承継の可能性を考えているならば、自分が経営をしているときと同じやり方は踏襲できません。
第三者に経営を任せるならば、業務分担、人の育成、自分がいなくなってもビジネスが回る仕組みを作る必要もあります。
この準備が1-2年で完結するものでないことは、経営者であればよくお分かりのはずでしょう。
3)国内の親族外承継のマーケットは未だに脆弱
残念ながら、日本国内における事業承継目的のM&Aマーケットはまだまだ脆弱です。
不動産のように全国各地の業種別で、売り買い情報がデータベース化されていると思ったら大間違いで、実際には売り手にあわせて、1件1件買い手候補を地道にあたっている作業が必要になります。
その際にはかなり多くのお断りを受けることになるのですが、これは自社が悪いと言われているわけではなく、ニーズが合わないだけなのです。
親族外承継を実現するには、幅広く買い手候補をリストアップし、しつこく打診を続ける時間と労力が必要です。
事業承継の成功には経営者自身の準備と勉強が不可欠
このように事業承継を成功させるには、経営者に相当の自覚と準備が求められます。
必要に迫られ重い腰をあげたものの、自分のイメージする理想の譲渡先が見つからなかったり、希望する譲渡額に遥か届かず、失望される経営者は後を絶ちません。
銀行や業者の責任を問うだけでなく、自らの準備や勉強も万端にしておく必要があることを、経営者の皆さんによく知っていただきたいです。
※1:2015年 全国社長の年齢調査 株式会社東京商工リサーチ
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160208_06.html
※2:事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会の開催について 中小企業庁
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei3.pdf