「速さ」とは、どれだけ速いのか、速さの程度だけを表している指標です。一方で、「速度」とは、どの方向にどれだけ速いのか、方向と速さの程度の両方を表している指標です。起業家に求められる指標はどちらだと思われますか?一緒に考えてみましょう。
質問:速さと速度の違いとは何でしょうか?
高校の物理の時間に習ったことで、今でも印象に残っていることが一つあります。
それは「速さ」と「速度」は全く違うものである、ということです。2つの定義は以下のとおりです。
速さ
どれだけ速いのか、速さの程度だけを表している指標。
速度
どの方向にどれだけ速いのか、方向と速さの程度の両方を表している指標。
今日は、この2つの概念のうち、経営で必要とされるのはどちらの指標か、一緒に考えてみましょう。
新しい事業に求められるのは速さか?速度か?
例えば、私が北極星に向かって、毎時10kmの速さで走っていたとします。
対して、あなたが東に向かって10kmの速さで走っているとすると、私とあなたの走っている「速さ」は同じ、毎時10kmになります。
ところが、目標が北極星だった場合、北極星へ向かう「速度」は、私が毎時10kmとなるのに対して、あなたは0kmとなるのです。
起業する場合、あるいは新しい事業を展開する場合に求められるのは、当然に「速さ」ではなく「速度」です。
なぜなら、目標を明確に決めて、その方向へ進む速度を高める必要があるからです。
このように、起業家は、目標を明確にすることに、時間を惜しんではいけません。
目標に向かっているかどうか、常に確認することも怠ってはいけません。
走る方向が目標と違っていたら、いくら速く走っても、速度は上がらないどころか、時にはゼロやマイナスになってしまうことさえあるからです。
速度を生かした経営者の代表格・孫正義さん
そういえば、経営における速度の重要さを教えてくれる一例が、昨日発表されました。
ソフトバンクの孫正義さんによる、ARMの3.2兆円に及ぶ買収のニュースです。
評論家の中には「2週間前に起きたイギリスのEU離脱騒ぎで、ARMの株価が下がったこともあったから、この時期に動いただけだろう」と考えられた方もいるようです。
では、なぜ孫正義さんが素早いタイミングで、3.2兆円もの投資を決められたかといえば、彼に「情報革命で人々の幸せに貢献し、世界の人々から最も必要とされる企業グループとなる」という目標があったからでしょう。
他にもARMを狙っていた半導体企業はありましたが、「目標に向かう」速度を生かせたのは、ソフトバンクだったのです。