昨年末の大ヒットTVドラマ「下町ロケット」は、主人公達が特許を真似した企業を相手取り、訴訟も辞さず、徹底抗戦の構えを取った痛快劇でした。ところが、現実の世界において、彼らのような行動を取ることは非常にシビアで、困難を極めます。特許を真似してくる相手と、どのように関われば、知的財産を最大限活用できるのでしょうか?
下町ロケットの特許訴訟は現実的に賢明でない
昨年末に放映され、大ヒットとなったTVドラマ「下町ロケット」で、大きなテーマの一つとなっていたのが、知的財産と特許でした。
主人公の佃製作所社長・佃航平は、ロケットエンジンバルブ技術をナカシマ工業に真似されたり、更には人工心臓用のバルブ技術をサヤマ製作所に真似され、その度に彼らと訴訟も辞さず、徹底抗戦の構えを取り、連戦連勝の痛快劇と相成ったわけです。
ところが、このドラマを見て専門家として感じたのは、ドラマが知的財産の現実的な活用方法、もっと言うと知的財産の最大限の活用方法を伝えていないということでした。(ドラマなのでそれはそれで楽しめるのですが)
確かに、知的財産を活用する手として、「真似されたら、真似した相手を訴えたり、警告をしてやめさせる」場合もあります。
しかし、この方法は(特に中小企業にとっては)必ずしもよい方法ではありません。
相手を訴えるにはそれなりの調査と事前準備が必要ですし、訴えた後の肉体的・精神的負担は想像を絶するものがあるからです。
要するに訴訟や警告は、相手に「宣戦布告」をして喧嘩をすることですから、こちらによほどの勝算・資金力・人材(つまり経営資源)がなければ訴訟はやるべきではありません。
特許を真似した相手と協力関係を作るのが実は特許活用の賢明な道
では、どのような方法が、知的財産と特許を活かし、ライバル他社と関わっていくうえで、賢い方法なのでしょうか?
それは、真似をした相手のことを分析し、例えば「非常に品質の高い製品を作る能力があるから、ここはリーズナブルな価格で実施を認め、協力関係を作る」ことです。
「私はね、ウチの技術は真似されてもいいと思ってるんですよ。ある意味有名税ですし、それだけウチの技術を認めてもらっているということですからね。」
これは、先日大阪のとある会社の経営者と面談した際に、その経営者がおっしゃった言葉です。
私自身もこれに同調し、
「そうですね。真似されていることを逆手にとって連携を組むことも考えられますし、知的財産の使い方によって良好な関係作りもできる可能性もありますね」
とお答えしました。
実際、大手企業では模倣された中国メーカーと手を組み、安価で良質の製品を世に出している例もあります。
その意味で、上述の経営者の考え方は間違った方向ではないと考えています。
特許を真似された後でやってはいけないこと
一方で、「技術が真似されている」ことのみに腹を立てたまま、何も対策をしない企業も少なからず存在します。これは最悪です。
いつのまにか相手企業に市場を奪われたまま、手をこまねいて見ているだけしかできない、という状況にもなりかねません。
つまり大事なことは、真似されたことだけを見るのではなく、その向こうにある相手のことを冷静かつ徹底的に分析した上で、知的財産をどう活用すれば最も効果的かを見極めることなのです。
アクションプランを立てた上で、それを確実に実行に移さねばなりません。
一見当たり前のようですが、知的財産のように普段見えないものは、この一連の行動がなかなか起こせないことも事実です。
皆様も一度、御社では知的財産をどう活用すれば最大限の効果を発揮できるか?考えてみるのはいかがでしょうか?