商業登記は、きちんと理解していないと、大きなトラブルになることもあります。そこで本日は、商業登記のイロハとトラブルになりやすい注意点をご紹介したいと思います。特に平成28年は役員の任期が10年に延長となってからちょうど10年目にあたり、再度登記しなおさないと、会社登記を抹消される可能性があります。
商業登記を理解しないとトラブルが起きやすい
土地や建物などの不動産を売買すると、法務局などに名義が変わったことを届け出る必要があります。
この手続きを「登記」ということは、皆さんご存知ですよね。
「登記」という手続き、実はこれ、不動産だけに必要なわけではありません。
会社についても、土地や建物などと同じように、登記をしなければならない項目があります。
こういった会社などに関係する登記は「商業登記」といいます。
会社を設立したり運営したりしている方は、法務局で登記の手続きを行った経験がある方もいらっしゃることでしょう。
商業登記は、きちんと理解していないと、大きなトラブルになることもあります。そこで本日は、商業登記のイロハとトラブルになりやすい注意点をご紹介したいと思います。
商業登記には決められた登記事項が存在する
まず、商業登記は、登記しなければならない事項が定められています。
代表的な事項は下記のようなものです。
- 1:商号(会社の名前)
- 2:本店の所在場所(会社の住所)
- 3:公告をする方法(官報やネット公告など)
- 4:目的(会社の行う事業など)
- 5:発行可能株式総数
- 6:発行済み株式の総数
- 7:資本金の額
- 8:株式の譲渡制限に関する規定
- 9:取締役の氏名
- 10:代表取締役の氏名及び住所
- 11:監査役の氏名(監査役設置会社の場合)
- 12:取締役会設置会社である旨(取締役会設置会社の場合)
- 13:監査役設置会社である旨(監査役設置会社の場合)
会社設立時には、これらの事項を登記手続きしています。
全ての事項が必要とされているわけではありませんが、少なくとも1〜10までの項目は、最初に決めておかなければなりません。
トヨタも!登記事項は外部の誰もが調べられる
ちなみに、これらの登記事項は法務局などで調べれば、誰でも閲覧することが可能です。
例えば、私がトヨタ自動車の登記されている事項を調べようと思えば、法務局に行けば調べることが可能です。
もちろん街で見かけた会社の名前が分かれば、その情報も登記から調べることが出来ます。
もし、新しく取引先になった会社の情報などを知りたければ、法務局に行けば簡単に調べられたりします。
ちなみに最寄りの法務局は、下記のページから検索することができますよ。
またインターネットなどでも、登記情報は調べることが可能です。
(こちらはIDを取得したりクレジットカードなどの登録が必要になります。)
いずれも情報を取得するために、数百円の手数料が必要になります。
情報を調べるだけであれば、インターネットを利用した登記情報提供サービスの方が、いくらか割安になっています。
登記事項に変更がある場合には再登記が必須
会社を運営していると、登記されている内容に変更があった場合に、必ず変更登記を行わなければなりません。
会社の名称を変えたり、本店の住所が変更になった場合はもちろん、うっかり登記を忘れてしまいがちな場合があります。
代表的な例は以下のとおりです。
▼社長(代表取締役)が引越しをしたのに住所を変えていない
代表取締役の住所は登記事項です。
役員(取締役)であった親が死亡したのに登記を行っていない
死亡した場合も退職と同じであるため、再度の登記が必要となります。
新しい事業を始めたのに登記していない
法人は「目的」に挙げられていない事業を行ってはならないことになっています。
役員の任期が過ぎているのに登記をしていない
定款で定められた任期を過ぎているのに、重任や再任の登記をしていないケースもNGです。
いずれの場合も登記をしなければならない期間というものが定められており、基本的には変更があってから1年以内に手続きしなければなりません。
この期間を過ぎてしまうと、なんと…罰金(過料)が課せられてしまいます!
変更がある場合は、忘れずに必ず登記を行うようにしましょう。
登記しないと自動的に解散させられてしまう?
株式会社や一般社団法人・一般財団法人については、特に注意しておかなければならないことがあります。
これらの法人には「みなし解散規定」というものが存在します。
最後に登記をした時から、
- 株式会社:12年
- 一般社団法人・一般財団法人:5年
この期間に何も登記した事実が無いと、法人は「休眠会社」とみなされてしまいます。
例えば株式会社の場合、役員の変更などの登記手続きが12年に以上何もないと「この会社、実際には動いてないんじゃないの?」と勝手に思われてしまいます。
株式会社の場合、役員の任期は最長でも10年と決まっていますから、少なくとも10年に1回は登記が必要になるんです!
それなのに手続きしていないということは、「存在していないのと同じ」と思われてしまうんですね。
休眠会社とみなされると、法務局の権限で強制的に解散されてしまう、つまり勝手にこの世から消滅させられてしまいます。
そうなっても文句は言えませんし、登記をしなかったのはその会社の責任なんです!
平成28年は役員任期の登録忘れで消える会社が出てくる!?
日本には商業関係の法律として「商法」と言う法律がありますが、そこから会社に関する部分を抽出した「会社法」という法律があります。
平成18年にその会社法が改正となり、株式会社については、役員の任期が最長で10年まで伸ばせることになりました。
それまでは2~4年の期間が最長だったのでチョコチョコ登記しなければならなかったのですが、10年に延長になったとき、多くの会社が定款を変更して役員の任期を10年にしたのです。
その関係もあり、平成18年以降の商業登記の件数が一気に減ったそうです。
つまり平成18年から、全く登記内容に変更がない株式会社が増えているんですね。
もし、平成18年の改正のタイミングで定款を変更し、役員の任期を10年にしていれば、そろそろ任期満了の時期が近づいています。
10年以上続いている会社は、もう一度定款の内容を確認しておいた方が良いかもしれませんよ。
「うちの会社は税理士がちゃんと見てくれているから大丈夫」と思っている社長さんは、特に注意が必要です。
税理士は税金については専門家ですが、登記についてはほとんど関心を持たない税理士もいるからです。
登記を忘れてしまったために、罰金を払うはめになったり、会社消滅の危機に直面することのないよう気を付けましょう。