父の訃報を受けて、悲しみに暮れながらも、財産について遺産分割を話しあおうとしたところ…預金口座にお金が残っていません!なぜか?少し考えると「まさか、アイツ勝手に使ったな…」という人間がいたりします。もちろん相続財産の無断使用は不法行為なのですが、解決は一筋縄とはいきません。その理由を解説していただきます。
遺産分割するはずの預金が全く残っていない!
私のこれまでの“現場経験”からですが、相続が発生し、さて遺産分割を話し合おうとしたところ、亡くなられた方(被相続人)が預金をほとんど持っていないことが明らかとなります。
「そんなはずはない!」
「この間まで相当な預金を持っていたはずだ! 」
「定期で幾らいくら持っているから亡くなったらお前にあげると言われていた!」
なぜ、予想だにしなかった事態が発生するのかよく考えてみると、相続人のうち一人が、被相続人が亡くなる前に預金を引き出していた?!と、貴方も疑い始めます。
そして、それはビンゴ!という場合が多いです。
被相続人に無断の預金引出しは不法行為だが…
もちろん、生前に被相続人了解の下、その一人に預金の引き出しを依頼し、それをあげると言って渡したのであれば、それは「贈与」になります。
しかし、預金者本人である被相続人に無断で引き出して使ったり、自分の口座に移したりしていれば、それは不法行為の「横領」と言えます。
このような場合、他の相続人は、勝手に引き出した一人の相続人に、引き出した預金を“返せ!”と返還請求をすることができます。
少々ややこしいのですが、生前に無断で引き出された預金を返せという損害賠償請求権などは、被相続人本人にあり、被相続人が亡くなることで、この権利を相続人が相続します。
そして、この権利に基づき、不法行為を行なった一人に“返せ!”と請求することができるのです。
生前預金口座の存在(銀行名など)が確認出来ていて、それが亡くなった後で、一人が勝手に引き出したのであれば、証拠も見付けやすいのですが、このようなケースでは往々にして、そうは行きません。
不法行為を立証するのは極めて困難!対策は?
なぜ、すんなりトラブルが解決しにくいかというと、不法行為を行った者から、
「亡くなったお父さんに頼まれて引き出したけど、そのままお父さんに渡したから、その後どうしたか何て知らないよ!」
と、言われてしまえば、不法行為を立証するのが極めて困難になるからです。
「いやいや、一緒に暮らしていたアンタしか、預金を引き出す人は考えられないでしょ?!」
「アンタが預金の管理をしていたじゃないか、知らないで通るか!」
「まともに話せないお父さんがそんなこと頼めるはずがないでしょ?!」
相手に対する疑わしさ満載ですし、言っていることも妥当なのですが、相手の不法行為を立証できる言葉とはならないのです。
不法行為を立証することが出来なければ、“返せ!”という請求権(相続問題ではなく「民事訴訟」の問題ですが。)は認められません。
預金が勝手に歩いて居なくなることはないんですけどね(泣)
亡くなられた方名義の預金がどこの金融機関にあるかを見付け出し、その金融機関に1,2年前まで遡った入出金の取引履歴を要求し、しかもその中に不正に引き出されたものがあることを証明しなければならないため、泣き寝入りとなる場合が多いのです。
あるある!なお話ですから、親御さんがご健勝のうちに、相続財産の管理方法をきちんと話し合いましょう。