今では高級食材を取り扱う小売店の代名詞となった成城石井も、約30年前には地方沿線の小洒落た1店舗しかない八百屋でした。今の時代、あらゆるもののイニシャルコストが低くなっています。資本力が弱くても、気づきと創造性と行動力さえあれば、私たちには何だってできると、佐藤先生はおっしゃいます。地元の酒屋の心温まる話も含め気付きの重要性を話してもらいました。
成城石井も昔は小洒落た八百屋みたいなもの
日本中のマニュアックな商品だけでなく、世界中の珍しくて、なおかつ日本人に合う食材を探して販売して成功した「成城石井」も、約30年前には小田急線の成城学園前駅の目の前にある、たった一軒の小さなお店でした。
私の恩師が近くに住んでいて、帰りに必ず成城石井で食べ物やワインを買って帰っていたのを、今でも良く覚えています。
値段は高いけれど、当時ではデパートでも売っていないものを見つけて、しかも美味しい時には、得をした感じがしました。
今でこそ首都圏であれば、あちらこちらで見かけますから、皆さんにとってはそこまで珍しくないかもしれませんが、昔は少し洒落た八百屋といったところ。
八百屋の親父が、世界中に買い付けに行って、直で取引し始めるというのは、想像するだけでも、かなりのリスクを伴う行動だったことでしょう。
でも彼らは、お店に来る顧客のニーズに気づき、何を日本に持って来れば良いか的確にイメージできてましたから、リスクをとっても、顧客のニーズに応える道を選びました。
たった1店舗しかなかったあの当時から、30年もしないうちに、150店舗近くを運営する巨大な小売店になり、ローソンに買収されることになるとは、夢にも思わなかったことです。
ローソンが手に入れたかったのは、商品そのものというよりも、文化であり、気づきであり、彼らの想像力だったのでしょう。
資本が幾らあっても、自力でそれらを手にしようとするのは非常に困難なことです。
酒屋の2代目が店に起こしたレボリューション
今は小さなお店や会社であろうとも、更にはどんな業種でも、発想次第で夢を叶えることが可能です。
なんといっても、インターネットの情報革命により、あらゆるもののイニシャルコストが低くなっていますから、資本力が弱くても、気づきと創造性と行動力さえあれば、私たちには何だってできるのです。
そういえば、私がよく行くスーパーの前に、5店舗続きの2階建ての商店街があります。
下の一軒のお酒屋さんは、昔は日本酒とビールだけで大したお客さんも入っていなくて、経営も大変でしたが、そこのボンが2代目になってから鼻息が荒いんです。
しょんぼりしていた親父さんも、夜遅くまで声を出しています。
親父さんもやる気になったのは、何と言っても2代目の気づきと行動力が源泉でしょう。
まず2代目はパソコンを使って、日本中の焼酎会社と世界中のワイン会社と取引をして、様々な焼酎とワインを置くようにしました。
しかも、余り高くないものばかりです。
ここしばらくで、かなり人の入りが多くなっているように見えます。
更に2代目は、一通りの仕事が終わると、新たに始めた灯油の訪問販売に出かけるようになりました。
だから、親父さん夫婦が交代で店をやっています。売れると人は楽しくなるものですよね。二人とも目の輝きがこれまでと明らかに違います。
世界中のお酒を販売している華やかなお店の裏で、せこせこ灯油販売なんて地味だ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、私の住む八王子は東京都とは言えど非常に寒いですから、灯油には一定の需要があります。
お客さんとの会話や、お酒の配達途中の道すがらで、彼はその需要に気がついたのでしょうね。
世界中のお酒を仕入れるリスクを取る以上、確実に現金収入が取れる商売もしながら、彼はいずれこのお店を成功させて、拡大していくのだろうなと、私は確信しています。
1日1つの気づきを得ることが始まりの第一歩
お酒と灯油の訪問販売では、全く違う業種を彼はやっているのですが、なぜ彼はあえて灯油販売に参入できたのでしょうか。
彼が自ら毎日新しい発見をすることを、常に意識し、発見したことを元に行動を起こしたからでしょう。
同じ環境にあっても、彼のような行動を起こせるとは限りません。
私達は、毎日同じようなことを繰り返していると思いがちですが、本当は生活や通勤や業務で同じ人々に会ってはいないですし、同じ職場の人でも、彼や彼女は1日で異なる体験をしてきた別の人なのです。
1日1つだけ、自分に役立つような発見を心がけてみませんか?毎日天気や気温は異なり、空気も風も、飛んでくる虫や鳥、咲く花々も色々です。
「ちりも積もれば山となる」「千里の道も1歩から」といいますが、1日たった1つの発見だけでも毎日が面白いし、人としての毎年の年輪が増し、大きな大木になれるのではないでしょうか?
社長のみならず、社員も従業員もそれぞれの分野で、”1日1つの工夫”が、1年後の会社を変え、最後には自分の人生劇場で、良いフィナーレを飾れることでしょう。
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