カイゼンせよ トヨタが本格的に農業進出

企業分析

 トヨタ自動車が熊本の農業法人へ出資を行うことが報じられた。トヨタが農業へ直接出資することは今回が初めてとなるが、グループ会社「豊田通商」で、既に国内青果の生産から販売を一気通貫で行うことに成功しているので算段はつきやすい。不効率な作業が当たり前の業界で、トヨタの「カイゼン」が浸透するか見ものだ。

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トヨタ自動車が農業算入 何を狙うのか?

 12月14日(日)の日本経済新聞によると、トヨタ自動車は熊本県の農業法人「果実堂」※1へ約1億円の出資を決めた。
 
 トヨタ自動車が独自に農業分野へ出資するのは初めてのことである。自社が車で培った生産方式、通称「カイゼン」を、不効率な生産方法が未だに続く農業分野でも活かしたいという意向をもっているようだ。
 
 果たして今まで全くノータッチだった農業へ算入し、トヨタは成功するのか、「カイゼン」は農業でも通じるのか、探ってみたい。

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グループ会社「豊田通商」でノウハウ有り

 
 トヨタ自動車自体は農業分野にこれまでノータッチであるが、グループ会社「豊田通商」は日本の農業へ深く関わっている。
 
 例えば豊田通商は子会社「豊通食糧」を通じて、宮城県の株式会社ベジ・ドリーム栗原へ出資を行い、2008年から国内最大規模のパプリカ栽培施設を運営している。
 
 パプリカ農場は隣接するトヨタ関連の自動車工場内にある自家発電機から排出する温水を農場へ供給し、ビニールハウスの温度維持に活用している。トヨタ自動車がモノづくりによって培った技術や施設を効率的に使用したことで、暖房コストが劇的に節約できるのだ。
 
 農場は開設当初の約3ヘクタール強から現在では約7ヘクタールまで拡大し、90%を海外からの輸出で補うパプリカ消費の国産需要に大きく貢献している。
 
 通常の1生産者あたりのパプリカ耕地面積が、5アールから10アール(100アール=1ヘクタール)であり小規模でも販売に苦戦しているのに対して、豊田通商は7ヘクタールで生産される膨大な量のパプリカについて販路を築いており、実績が業界内でも認められている。※2
 
 トヨタは上記パプリカの成功例も見届けたうえで、今回の出資に踏み込んだものと思われる。

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農業ノウハウ化 トヨタのカイゼンに期待

 農業にはビジネスとして、他の領域では考えられない2つの不効率な仕組みがある。1つは市場流通により価格が卸売市場と仲卸によって操作され、価格を生産者が決められない場合が多いこと、もう1つは生産技術が生産者の勘に頼られており、ノウハウ化が進んでいない作物が多すぎることである。
 
 果実堂は当面、先行出資している三井物産が持つ豊富な販売網に自社のベビーリーフを供給するため、価格決定権をある程度有する。
 
 トヨタはもう一つの不効率な仕組み、生産技術が勘に頼られ、ノウハウ化されていない、ということに対するカイゼンを、アドバイザーとして行うものと考えられる。
 
 ベビーリーフは40日前後で収穫のサイクルが回転する作物のため、多くの検証が行いやすい。トヨタがどのようなカイゼンを現場にもたらすのか、これからに期待したい。

※1 果実堂HP
http://www.kajitsudo.com/
※2 国産パプリカの現状と課題
https://www.fsraj.org/taikai/2013/2013houkoku/?action=common_download_main&upload_id=395

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