私たちがいつもは気にとめない「あたり前」のものでも、価値を見出す人は必ずどこかにいる。秋田県の木工メーカーがオーストリアのウィーンで「組み立て和室」を販売することが発表されたが、ヨーロッパでは今「和式インテリア」に対して注目が集まり、新しい需要が期待される。ビジネスは「何を売るか」と同時に「どこで売るか」も重要な要素と言えよう。
当たり前なものが他人にとって価値を生む
私たちがいつもは気にとめない「あたり前」のものでも、そこに価値を見出す人は必ずどこかにいる。
秋田県にある和室造作材メーカの菊地合板木工が、海外向け商品「組み立て式 和室」をオーストリアのウィーンで展示販売することを、秋田魁新報(6月10日付 さきがけ on The Web)が伝えた。
同紙によると「組み立て式 和室」は、間口と奥行が3.5メートル、高さ2.5メートルの「8畳間」であるという。
また、木材は国産のヒノキと秋田杉を使用し、ふすまには書道家 小澤蘭雪さんの作品、竹をモチーフにした絵柄の障子で仕上げるなどのこだわりぶりである。
何を売るかと同時にどこで売るかも重要要素
日本人の多くが北欧や南欧風のインテリアをオシャレだと思うように、欧米人にとっても我々が見慣れた和室スタイルには”憧れ”に値するだけの条件があるようだ。
海外のインテリアデザイン・建築のインターネットサイト「reshome」では、日本式インテリアを作るために10のコツを紹介している。
彼らは日本人が1,000年以上に渡って「日本式インテリア」を守り続けていることを提示した上で、日本の和式インテリアが「慎ましくも美的で文化的」かつ「自然と調和した“禅”のある生活」を提供してくれる、と大きな賞賛を与えている。
ちなみに和室文化の象徴である「畳」の国内需要はここ20年ほどの間で、70%減となっていることも事実である。※1
これらの例から学べる教訓が1つある。
それはビジネスを成功させる秘訣は「何を売るか」も大事だが、「どこで売るか」も同様に重要な要素という教訓だ。
「砂漠で水を売る」という言葉があるように、同じ水でもどこで売るかでその価値は変化する。
ビジネスは求めている人のいる場所で展開したほうが成功する確率があがるのだ。
日本の消費は減退しても世界の消費は増える
日本は全体として既に少子高齢化に伴う人口減少社会となりつつある。どれだけ自分がこだわったモノを販売しても、同じ場所に留まっていてはなかなかうまく行かないケースも生じている。
だとしても、頭を垂れる必要はない。
もしも、周囲の人たちが貴方の扱う商品をあたり前に感じているとしても、それは一握りの価値観にすぎない場合があるからだ。
なにせ地球上には72億の人がおり、2050年には90億人にその数が膨れ上がることが予想されている。
世界を俯瞰してみた時に、経済はまさにこれから規模を拡大していくのだ。
視点を一旦リセットし「どこで売るか」を考えることが、今同じ場所で払っている労力を少しでも節約し、新たなビジネスチャンスをもたらすきっかけと成り得る。
参照元
※1 産経新聞 2014年5月17日(土)付け記事より