音商標が商標登録の対象として認められるようになった制度開始から2年半の歳月が経ちますが、先週、音のみの商標がようやく3件(大幸薬品・Intel・BMW)初めて成立したようです。音商標のみの商標登録に対して、特許庁が音のみの商標が4つの基準に該当する場合は商標登録を認めないとしており、3社も苦戦しながらようやく商標登録できたというのが現実です。
2年半でようやく初の音商標!3社が登録認められる
音商標が商標登録の対象として認められるようになった制度開始から2年半の歳月が経ちますが、先週、音のみの商標がようやく3件初めて成立したようです。
大幸薬品「正露丸」のCMで流れるラッパの音、IntelのCMで流れる「パパパパン」という音、BMWのCMで最後に流れる「ワーワワワワン」という音の3社です。(わかりづらいですから、記事の後述部分でYouTube映像を貼り付けておきますね)
音のみの商標とは、歌詞を含まないメロディーだけで構成される商標のことをいいます。
参考リンク:特許庁:音楽的要素のみからなる音商標について初の登録を行いました
通常、商標は、問題がなければ出願から6ヶ月程度で商標登録となるのに対し、音のみの商標が2年半もの時間がかかったのは何故でしょうか。
特許庁の審査でNG(商標登録できない理由)が提示されてしまい、この認定を覆すのに四苦八苦したからです。
先に出願した企業に商標登録を認める商標制度において、各企業は、音商標が商標登録の対象として認められるようになり、自社の音商標について商標登録を取得しようとスタートしました。
まだ誰も商標登録を受けていない新分野ですから、自社の音商標について問題なく商標登録を受けられると信じ、手続を進めたわけですが、蓋を開けてみると、音のみの商標(いわば純粋な音商標)については、商標登録を受けられないと特許庁に壁を突きつけられるのでした。
音商標を受け付けるとうたいながら、商標登録は認めない。
おかしな運用だと思いませんか?
私は思います。
音商標のみの審査通過を阻害する4つの基準とは
さて、どこが問題だったのでしょうか。
音のみの商標は、商標として機能しないと特許庁の審査で指摘されています。
その音を聞いても、企業が取り扱う商品を消費者が連想しないという理由です。
特許庁の審査基準を見てみると、音のみの商標が次のものに該当する場合は商標登録が認められない、と書かれています。
- 1)自然音
- 2)クラシック音楽、歌謡曲、オリジナル曲等の楽曲
- 3)商品の魅力を向上させるにすぎない音
- 4)広告等において、注意を喚起したり、印象付けたり、効果音として使用される音
今回は、正露丸のラッパの音商標について商標登録が認められましたが、これは2)に当たると判断されたのでしょう。
インテルの音商標やBMWの音商標は4)でしょうか。
任天堂もマリオがコインを取る音商標を出願していますが、これはまさに4)の効果音でしょう。
規定が漠然としすぎて、ありとあらゆる音が上記に該当しそうです。
現時点で「音のみの商標」は非常に壁が分厚い
では、上記に該当したにもかかわらず、今回どうして商標登録が認められたのでしょうか。
各3社は、自社の音商標が広告等により広く知られていることを証明し、これが認められたからです。
つまり、音のみの商標の場合、その多くは今のところ上記に該当すると判断されるのですが、例外的に広く知られている場合は、商標登録が認められるという運用になっています。
商標登録が認められる事例がもう少し増えてくればまた状況は変わるかもしれませんが、今のところ、音のみの商標は非常に壁が分厚いといえます。
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