傷病手当金とは、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた、被保険者のための手当金制度です。この制度で問題となるのが、1つの傷病を理由に手当金をもらっている場合に、違う傷病が発生した場合です。2つの傷病はそれぞれが手当金を受給できる理由となるのか?重複期間の手当金の金額や受給期間は?それぞれの疑問にお答えします。
胃潰瘍で傷病手当金をもらいはじめたら躁うつ病も併発!
傷病手当金とは、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた、被保険者のための手当金制度のことです。
被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に、全国健康保険協会へ健康保険傷病手当金支給申請書を申請することで、手当金が被保険者に支給されます。
参考リンク:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
申請書を記入する際は、ほとんど単一の傷病を理由として提出することになりますが、たまにイレギュラーなケースが生じます。
たとえば、胃潰瘍で胃の具合が悪くなったため労務不能となり、傷病手当金を受給している間に、精神的なストレスによる躁うつ病の診断も下されたというケースです。
この場合、傷病手当金は両方の傷病について、それぞれ受給できるのでしょうか?
2つの傷病が重なった場合それぞれの理由で傷病手当金を受給できるか?
結論から申し上げますと、手当金をもらう理由となった病気と、手当金をもらい始めてから羅患した病気に関連性があると判断されれば、病名が違っていても、同一の傷病とみなされ、支給期間の延長や支給金額の変更はありません。
逆に、2つの病気に関連性が無いと判断されれば、別の傷病としてそれぞれの傷病手当金が支給対象となります。
先程の例で言うと、胃潰瘍と躁うつ病に関連性があると認められれば、支給期間の延長や支給金額の変更はなく、胃潰瘍を理由として傷病手当金の支給を受け始めた日から1年6か月まで、手当金の受給を受けることになります。
胃潰瘍と躁うつ病に関連性が無いと認められた場合、胃潰瘍と躁うつ病、それぞれの理由にもとづいて、傷病手当金の支給を受け始めた日から1年6か月まで手当金が支給されることになります。
なお、それぞれの傷病について手当金の受給を受ける場合、最初の病気による傷病手当金が1年6か月支給された後で、次に発症した病気による傷病手当金の「残りの支給期間」分の手当金の受給を受けることになります。
たとえば、胃潰瘍による手当金の支給開始から1年後に、躁うつ病による手当金の支給期間が始まった場合、トータルで手当金を受給できる期間は、両方を合算した3.2年ではなく、重複期間(6ヶ月)は両方とも消化されたものとみなされ、2年が支給期間となります。
この点は注意が必要です。
2つの傷病手当金の受給期間が重なったら手当金は2倍貰えるか?
ここまで見ていくと、胃潰瘍と躁うつ病に関連性が無いと認められた場合、胃潰瘍と躁うつ病それぞれについて、両方の傷病手当金を重複してもらえる期間が生じるはずです。
1日あたりの傷病手当金は、「支給開始日以前の継続した12か月の各月の標準報酬月額を平均した額÷3分の2」と決まっています。
もし重複して手当金の支給を受けられるなら、従前の報酬以上に手当金を受け取れることになるはずですが、どうでしょうか?
これについては、傷病が重複している期間は、1本の傷病手当金として受給することになります。
つまり、複数の傷病によりそれぞれの傷病手当金の受給資格があったとしても、同時に両方の傷病手当金を受給することは不可能です。
最初にイレギュラーなケースとは言いましたが、傷病は関連して併発することもありますので、ぜひ上記の情報を参考にしていただければと思います。