先週、元東京都知事(名前は伏せます)がツイッターに投稿したパソコンのキャプチャのブックマーク欄に、有名アダルト動画サイトXVIDEOSのブックマークがあったことが話題となりました。たまたま同じ状況を、社内で女性に発見されてしまったとしたら、セクハラ行為として認定される可能性はあるのでしょうか?
元都知事のアダルト動画サイトブックマークが話題に
先週、元東京都知事(名前は伏せます)がツイッターに投稿したパソコンのキャプチャが、ネット上で話題となりました。
キャプチャに映るブラウザのブックマーク欄に、男性なら(おそらく)誰もが知る、あの有名アダルト動画サイトXVIDEOSのブックマークがあったからです。
正直な話、元都知事が「漢」として現役であるというニュースに、多くの男性はある種の親近感を以って接したのではないでしょうか?
実際に、ツイッターのタイムラインを見ても、男性側からは、「やっちまったな!ドンマイ(笑)」「知事でもXVIDEOSくらい見ますよ。俺だって…おっと…」のような投稿が目立ちます。
ところが、同じ出来事に対しても、女性と思われるアカウントからは、あまり肯定的な反応はありません。
たまたまブックマークに入ったアダルト動画サイトを職場で見られたら?
では、職場で使用しているパソコン、たとえば自分の私用パソコンを会社でも使っているとき、ブックマークに同じ現象が起きていた、職場の人間にそれを見られたとしたらどうでしょうか?
もちろん、わざと社内でそのような動画を見るために、ブックマークへアダルト動画サイトを入れる人はいないでしょう。
たまたま、お世話になっているアダルト動画サイトを自らブックマークに入れている、頻繁にお世話になっているため、Googleの新しいタブを開いた時にサムネイルが下に出てしまったときです。
たとえば偶然、社内の女性にブックマークを発見されてしまったとしたら…
セクシュアルハラスメントによる不法行為(民法709条)で、損害賠償責任を背負わねばならない可能性はあるのでしょうか?
厚生労働省が定めるセクハラ認定行為〜2つのパターン
厚生労働省が公表している指針によると、セクハラと認定される行為には、2つのパターンがあります。
1つ目は、「対価型セクシュアルハラスメント」、2つ目は、「環境型セクシュアルハラスメント」です。
「対価型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受ける状態を指します。
「環境型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で、看過できない程度の支障が生じる状態を指します。
「対価型セクシュアルハラスメント」は、今回の事例には該当しませんが、「環境型セクシュアルハラスメント」については、「アダルト動画サイトが見えてしまう」という環境を問題とされる可能性があります。
たとえ環境型セクシュアルハラスメントに該当しなくともやるべきことはある
この点を更に詳しく掘り下げると、厚生労働省は「環境型セクシュアルハラスメント」の具体的な例として、
- イ:事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。
- ロ:同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。
- ハ:労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。
の3つをあげています。
つまり、「意図的かつ継続的」「抗議があっても継続表示する」という状態は、「環境型セクシュアルハラスメント」に該当します。
今回の事例では、たまたまブックマークが見えてしまった、たまたまサムネイルが表示されてしまった、という状態のため、表示されていることに気がついた際にすぐ消せば、セクシュアルハラスメントにはあたらないと考えることができます。
もっとも、もしも男性であろうと女性であろうと、パソコンでアダルト動画サイトのブックマークやサムネイルに気がついた人がいるようなら、いさぎよく真摯に謝罪することで、その後の人間関係を悪化させずに済みます。
ただ、一番の最善策が、職場ではなるべく余計なトラブルが起きないよう、プライベートな楽しみを自宅に留めること、であるのは言うまでありません。