3月23日(木)に、旧村上ファンド系のファンドが650億円前後を投じて、東芝の株を8.14%取得したことが大きな話題となりました。この段階で債務超過に陥っている企業の株を取得することは、すなわち上場廃止、破綻の可能性がないと判断したと言って過言ではありません。彼らの意思決定を支える2つの材料をご紹介します。
旧村上ファンド系のファンドが東芝株を大量取得
東芝に関する報道が立て続けに出ています。
中でも、3月23日(木)に、旧村上ファンド系のファンドが650億円前後を投じて、東芝の株を8.14%取得したことは大きな話題となりました。
旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールの投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが東芝の株式を8%強取得したことが23日分かった。筆頭株主に浮上した可能性が高い。エフィッシモは株主提案などに積極的な「物言う株主」として知られている。
23日付で関東財務局に提出した大量保有報告書によると、15日までに東芝の発行済み株式の8.14%を取得した。15日の株価で単純計算すると約650億円になる。
投資家にとって現時点で怖いのは、東芝が上場廃止、あるいは破綻してしまうことです。
この段階で債務超過に陥っている企業の株を取得することは、すなわち上場廃止、破綻の可能性がないと判断したと言って過言ではありません。
彼らの投資意思決定を支える2つの材料をご紹介します。
エフィッシモの投資意思決定を支える2つの材料
1)半導体ビジネスの売却と東芝メモリの早期上場が見込まれる
東芝の半導体ビジネスは同社にとって稼ぎ頭であり、年間2,000億円の利益を弾き出す、いわばドル箱です。
東芝は半導体ビジネスの一部を4月に分社設立される「東芝メモリ」へ移行することを決めており、入札には2兆円規模の入札が10社以上から行われていると報道されています。
つまり、この入札はそれだけ美味しい果実を生み出す源泉なのです。
先日の記事でもお伝えしましたが、東芝メモリの株を取得する会社は高い技術力と、東芝メモリが上場した場合に上場益という果実を得られます。
わずか1年後の「2018年に上場」という報道も出ていますが、過去には、NECが分社したNECエレクトロニクス(現在はルネサスエレクトロニクス)が、設立後たった9ヶ月で上場したケースがあり、実際に短期間での再上場はあり得ます。
2)監査法人と東芝の望む方向は同じ
更に、公認会計士協会の関根愛子会長は、東芝の四半期報告書提出が遅れている点について「監査法人は自分たちの納得のいくまで会社側と話すことが必要」とコメントしています。
この現会長・関根さんは、現在の東芝の監査人である、PwCあらたの出身です。
そうでなくても、東芝の監査をいい加減な形で終わらせることは、公認会計士に対する信頼を完全に失墜する行為であり、まずありえないとみてよいでしょう。
確かに、最悪のケースとしては「監査意見が出ずに上場廃止」ということも考えられます。
しかし、監査人は適切な開示がされていれば、仮に業績が悪かろうと、監査意見を出すことができ、間もなく破綻することが明らかな場合には、その旨を示す「継続企業の前提に関する開示」をしなければなりません。
したがって東芝と監査法人側では、
- この決算で膿を出し切るが、半導体ビジネスの売却によりキャッシュを確保し、銀行からの融資継続を勝ち取る
- 監査法人からはそれをベースに適正意見を出し、継続企業の前提に関する開示で問題のない状況にする
という形を目指しているのでしょう。
あくまで目先の破綻回避が焦点となっている
上記にお伝えした材料を前提とすれば、半導体ビジネスをできるだけ高い条件で引き取ってもらうことが必須となります。
そのために投資後、早期に上場させるというシナリオが書かれているものと思われます。
これが実現すれば、目先の破綻はなくなり、短期的な株価の上下が見込め、そこでの差益をとる目的でファンドが投資を始めた、と考えると辻褄が合います。
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