知的財産は非常に概念的でわかりにくい企業資産であり、一見すると価値が無いように思える技術や仕組みの中に、それらの見えない資産は眠っています。しかも、私達は見えない資産を見える化して、競争力の源泉としなければなりません。これに成功した富士フィルムの事例を見ながら考えてまいりましょう。
どんな企業にも必ず見えない資産が眠っている
知的財産は元々「見えない資産」ですが、企業にとって非常に重要で、間違いなくどんな企業にも「存在」するものです。
この資産が企業にとって競争力の源泉になるのであれば、他の人に「見せ」なければなりません。
本稿は、「見えないものを見せることの大事さ」について改めて考えてみたいと思います。
知的財産は狭義の「知的資産」ですが、ここでは知的資産として更に概念の広い「目に見えない資産全て」を考えます。
自社の「強み」も知的資産の一種です。
「目に見えない資産全て」のうちから経営に役立っているものを抽出し、全て「見える」状態にするにはどうすればよいのでしょうか?
見えない知的資産を生かした富士フィルムの例
これには色んなアプローチの仕方がありますが、一つの方法として例えば、
- ①その会社の業務工程をすべて洗い出す。
- ②その工程で特徴となっていることを抽出し、「なぜそうなっているのか?」「なぜ?」「なぜ?」を繰り返してその特徴を深堀する
- ③やっと見つけた知的資産を有機的に他の知的資産と繋げることで、その会社が生み出す価値(=顧客提供価値)にたどり着く。
ここで、その知的資産同士の繋がりと、そこから得られる価値の「見える化」が非常に重要になってきます。
会社が顧客に提供しているのは、「商品」や「サービス」そのものではなく、そこから生まれる「価値」だからです。
その「価値」を、どんな知的資産がどうやって活用されているかを見える化することで、はじめて経営に活用できている知的資産が浮き彫りにできます。
これに成功した有名な例が、富士フィルムが見出した自社の価値です。
フィルム自体は斜陽産業になっていくことがわかっていた時代に、富士フィルムは自社の知的資産を「写真フィルムを作ること」だけに見出しませんでした。
それよりも、自社の価値をフィルム事業で培った「どんなに薄い膜でも重ね合わせる技術」や「先進的な映像や画像を創り出す技術」に見出し、世の中に提示しました。
結果として、彼らの元には優秀な技術者が集まるようになりました。
写真フィルムは、生体高分子のコラーゲンを主要な構成要素とする薄い層の中にたくさんの化合物を配置し、化学反応を起こさせる精密化学薬品です。
この精密さは生物の細胞にも共通する部分があり、富士フイルムは写真フィルムで培った技術を優秀な技術者と一緒に共有し、現在ではiPS細胞の培養など再生医療に挑戦しています。
見えない自社の資産を見える化することが、時代の変化に適応するうえで役に立つことを示す好事例と言えるでしょう。
知的資産を強みとするのに企業規模は無関係
「見えない資産」に気付いている会社は、中小企業であっても自社の本当の「強み」と「価値」がわかりますから、大企業と充分渡り合えるオンリーワン企業として成長することができるようになります。
その中で、特に知的財産が価値の創造に寄与していることがわかれば、それをさらに活用するために何をしていけばよいか(アクションプラン)も見えてきます。
ただ漫然と知的財産を取得しているだけの企業とは、一線を画すことができるようになるのです。
あなたの会社は、「強み」を他の方に見せることができるようにしていますか?