36協定の見直しや、電通で起きた長時間労働・パワハラによる自殺により、労使トラブルに大きな注目が集まっていますが、現実としては相変わらず、長時間労働やパワハラ、それに不当解雇が、日常茶飯事で生じています。しかし、インターネット普及後に労使トラブルは5倍増となっており、経営者は労使トラブルを、より自分事と捉える必要に迫られています。
労使トラブルが事件になっても消えぬ法律違反
36協定の見直しや、電通で起きた長時間労働・パワハラによる自殺により、労使トラブルに大きな注目が集まっています。
政府としては、労働基準法を更に厳格化し、企業に法の遵守を求めていますが、現実としては相変わらず、長時間労働やパワハラ、それに不当解雇が、日常茶飯事で生じています。
私自身も日々、労使トラブルの最前線におりますが、法を遵守しない企業が減らない一番の理由は、あまり好ましい書き方ではないのかもしれませんが、労働者側の法律知識の欠如が未だ是正されていないことにあると思っています。
例えば、労働者側でもパートやアルバイトの人は、「自分はパートだから」「私はバイトだから」といった感覚でいる場合が多く見受けられるのが現状です。
労使トラブルは訴えられて初めて「トラブル」
また、もう一つ労基法が遵守されない理由として、企業側が「労働者は訴えない」「自分達はギリギリセーフ」と慢心していることもあげられます。
というのも、労働トラブルは、基本的には労働者が訴えを起こして、初めてトラブルとなります。
解雇で言えば、解雇された労働者が、「これは不当解雇である」と訴えを起こして、初めてトラブルになるのです。
逆に言えば、どんな不当解雇と思われる解雇であっても、労働者が不当解雇の訴えを起こさなければ、それはトラブルにはならないのです。
つまり、仮に不当解雇されたとしても、労働者自身が「不当解雇である」という認識が無い場合や「自分はパートだから仕方がない」っという誤った解釈を持っている限り、トラブルは発生しないのです。
トラブルが起きなかったのは運が良かっただけ
ただし、是非経営者の方にご理解いただきたいのは、上記の理由で労使トラブルが発生しなかったとしても、それは、あくまで「たまたま運が良かった」に過ぎないことです。
誤った法律知識の元で行使された労働が、たまたま運良くトラブルへ発展しなかったために、「誤った法律知識が、さも正しい」かのように勘違いしている事業主の方が非常に多いのです。
これは非常に危険なことです。
なぜなら、間違った法律知識に基づいて行った行為が、正しいと勘違いしているのであれば、今後同じような行為を繰返す事になるからです。
今後、同じように「たまたま運が良かった」が続く保証は何処にも無く、いつか大きなトラブルに遭遇する可能性が常に存在するのです。
しかも、「自分が間違っている」といった認識が無いため、トラブルに対して全く対策を講じていないので、一旦トラブルが起こってしまうと、事業主は非常に厳しい結果を受け入れざるを得なくなるのです。
インターネット普及後5倍に増えた労使トラブル
また、昨今のインターネット等の普及により、労働者は法律知識を容易に知れるようになりました。
ですから、従来は労働者側の法律知識に対する欠如等によりトラブルにならなかった事でも、現在ではトラブルへ発展するケースが非常に多くなっています。
ちなみに、全国個別労働紛争の相談件数は、平成13年では21万件だったのに対し、平成27年は103万件と約5倍以上に急増しています。
これは、インターネット普及前と普及後の時期で、明確に区別することが出来る現象と言えるでしょう。
また、スマートフォンが普及したことにより、今まで労基法の知識に触れることが無かった層も、その知識を手に入れることが出来るようになりました。
事業主と労働者との関係は、明らかに従前とは違ってきているのです。
これまで当然と思われていた事(もちろん、もとより正しかったわけではありませんが)が、当然では無くなりはじめていると言えます。
私自身も、事業主の方が当たり前と思っている事でも、「必ずしも法律上正しくない」場合は、事業主の方に是正するよう、ことある毎にお話しています。
事業主の方が誤った法律解釈をすると、非常に危険な状態に立たされることを、実際に起こった数々のトラブルを通じて、身を持って経験しているからです。
説教臭くなるかもしれませんが、ぜひとも経営者の皆様には、正しい労働基準法の知識を手に入れ、健全な労働基準のもとで、労働者と良好な関係を保つことを願って止みません。