下町ロケットで佃製作所は帝国重工へ特許の使用実施権を付与しました。もう一歩進んで考えると、実用的な特許を保有している場合、実施権のうち「販売」だけを大手企業に認める特許の利用方法があります。中小企業の悩みは販路の少なさであり、販路を持っていても技術を持たない大手企業があれば、両者の親和性が高い組み方となるからです。
佃製作所は帝国重工に特許実施権を付与した
昨年の今頃大ヒットしたドラマ「下町ロケット」を皆さんはまだ覚えていらっしゃいますでしょうか?
ドラマでは、佃製作所がロケット開発に挑む帝国重工へ、特許技術をそっくり渡さずに、実施権を与えて使用料を支払ってもらう形の業務提携契約を結びました。
結果として、佃製作所は自社の特許技術をロケットのみの使用で終わらせず、後に医療技術へも応用していきます。
中小なら特許実施権のうち「販売」だけ許諾するのも1つの選択肢
同ドラマのように、一般的に中小企業は、大手企業の下請けとして培った技術力を有していますが、いかんせん自分たちで製品を売る力に欠けているのが共通の「弱み」です。
その弱みを解消する手段として、特許を活用しているわけです。
特許を取得すれば、特許権者は他社に実施権を許諾することができますが、実施権のうち「販売」だけを許諾することも十分可能です。
ただ、その特許技術が充分に実用性があり、採算性も高いということを証明しなければ、大手企業も興味を持たないでしょうが、興味を持っていただき、販売協力を取り付けることができれば特許という独占権を持っていることは販売時には非常に有利に働きます。
誤解を恐れずに言えば、「企業の規模に関わらず、相手をコントロールすることができる」のです。
これも、中小企業が生き残る方法の一つです。
「ウチは規模も小さいし、ネームバリューもないので、販売については大手の力を借りるしかありません。
なので、ライセンス契約を結んで、ある会社に販売協力をしてもらっています」
これは、先日ヒアリングさせていただいた会社の社長がおっしゃっていたことを意訳したものです。
その会社は規模は小さいながら、他社では実現できない低コストで安全な装置を開発し、特許を取得しているのですが、営業面での弱みを解消するため大手企業と手を組み、特許を使った販売ライセンス契約を結んで全国展開をしようとしています。
すでにその効果も上がっているようです。
中小が特許を1人占めするのは愚策に過ぎない
「実用性が高く、今後市場を形成できる可能性が高い製品に活用する技術を、知的財産として自社の資産形成をし、他社に実施許諾して自らの手足として活用する」
これによって、強みをさらに強化したり、弱みを解消することが可能なのです。
それができていない会社は、「知的財産は自社だけのものだから、誰にも使わせない」という形でいわば「死蔵」状態になっている場合が少なくありません。
実にもったいないことです。
一度、自社の経営戦略に照らし合わせ、保有する知的財産の活用を根本的に見直してみたら、新たな道が開けるかもしれません。