労働諸法の厳守を要請する動きや、社会保険費用のコスト増大によって、企業では節約のムードが高まっています。そのため、本来は社員やアルバイトと一緒の作業をする人々を、業務委託契約で外注扱いにする企業が増えています。しかし、直近の最高裁判決では、これらの動きがいずれも敗訴する結果を迎えているのです。
節約のために労働者を業務委託で縛るのは不法
昨今、統制が強まっている労働諸法や社会保険諸法から逃れるために、作業は社員やアルバイトと一緒なのに、残業代や社会保険を支払わぬため、労働者と業務委託契約を結んで、外注扱いにするという無法な事実が見受けられます。
数年前には、大手飲食チェーンでも同様の雇用形態が見受けられたことが報道され、一気に避難の声が集まったのは記憶にあたらしいところです。
しかし、そのような事も今後はできなくなりそうです。
法権威がこれらの雇用形態に、相次いでNOを突き付け始めたからです。
相次いで出された「業務委託」が「労働者」とみなされた判決
ここ数年、「労働組合法における労働者」に該当するか否かをめぐる、注目すべき判決が相次いで出されています。
1つは、「住宅設備のメンテナンス会社と業務委託契約を結ぶ個人事業主」に関する判決で、もう1つは「劇場側と出演契約を結ぶ音楽家」に関するものでした。
いずれの訴訟でも、一審・二審は「労働組合法における労働者」とは認めませんでした。
しかし、最終的に最高裁判所は、個人として働く人の権利を重視して、いずれの訴訟についても「労働者に該当する」との判断を示しました。
一般に、「労働組合法における労働者」とは、賃金・給料等の収入を得て生活する人のことを言います。
そして、「労働組合法における労働者」であると認められれば、憲法で保障する「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の3つの権利が認められ、非常に大きな意味を持ちます。
例えば、「団体交渉権」が認められれば、労働組合が使用者と交渉することができ、使用者が正当な理由なく労働組合代表者との交渉を拒んでしまえば、いわゆる「不当労働行為」に該当されてしまうのです。
「業務委託の人間なら何でも無茶ぶり可能」という論理は破綻している
企業が経費削減等の理由から外注化を進めていることにより、個人事業主はますます増えています。
ですから、企業の恣意的な操作により個人事業主として報酬を受けていた人を「労働組合法における労働者」に該当すると、最高裁が認めたことは大きな意味を持ちます。
もちろん、裁判となった事件にはそれぞれ異なる背景・経緯がありますが、今後、同様の働き方をしている人、例えば会社と業務委託契約を結んで働いている技術者やドライバーなどが「労働組合法における労働者」と認められる可能性はあると言えます。
対して、企業の側としては、業務委託契約を結ぶ等する際には、上記の裁判例を参考に、慎重を期する必要があると言えるでしょう。