「補助金」と「助成金」名前は似ているけれど、制度のどこがどう違うのか?答えられる人は意外と少ないようです。そこでお金のプロが、補助金と助成金の共通点と相違点を解説してくれます。更に両者のうち、代表的な制度も3つずつあげていただいた上で、利用するメリットと注意点を指摘していただきます。これを読めば、補助金も助成金もまるわかりです。
「補助金」と「助成金」の違いをご存知ですか?
起業や会社設立を特集した記事を執筆し始めてから、補助金や助成金についてのお問い合わせをいただくことが多くなりました。
やはり補助金や助成金については、みなさん興味があるようですね。
お問い合わせの中でも多いのが、「○○補助金っていうのと××助成金っていうのは同じようなものなんですかねぇ?」というものです。
ちょっと聞いただけでは、同じように思えるキーワードですが、両者を分ける違いはあるのでしょうか?
実は、実務的に補助金と助成金を明確に区分する基準はありません。
こういうモノが補助金で、こういうモノが助成金、という区分けが無いのです。
もし、区分するとすれば次項で述べる点が、共通点・相違点として挙げられるでしょう。
「補助金」と「助成金」で共通・相違するポイント
補助金と助成金の共通点
まず補助金と助成金に共通することは、どちらも「国や地方公共団体に対して、一定の申請をすることで受け取ることが出来るお金」ということです。
補助金も助成金も、基本的には給付を受ければ返済は必要ありません。要件さえ満たせば「貰えるもの」です。
補助金と助成金の相違点
ただ、この二つは若干性格が異なります。
助成金というものは、要件を満たしていれば申請さえすれば、基本的に受け取ることができます。
それに対して補助金というものは、たとえ要件を満たしていたとしても、一定の審査に通過しなければ受け取ることが出来ません。
つまり、助成金は受給できる事業者の数に上限がないのに対し、補助金には一定の枠があるのである程度の割合でしか受給できない、という違いがあるのです。
この点が、助成金と補助金で大きく異なるポイントと言えますね。
要件は厳しいが活用範囲は広いのが「補助金」
補助金は、一般的にほとんどのものが広く募集されており、比較的誰でも利用できる内容となっているものが多いです。
ただ募集期間が短いものが多く、募集受付期間が過ぎてしまった場合には応募することが出来ません。
補助金自体にはある程度の予算枠というものが決まっており、その予算を使い切ると募集期間内でも、応募を締め切る場合があるので注意が必要です。
補助金の受給を受けるには、申請内容が本当に効果があるかどうかの審査を受ける必要があります。
その審査に合格しなければ、補助金を受給することはできません。
その補助金を利用することで、
- どれだけ事業が活性化するか
- どれだけ社会に役立つのか
などの必要性を積極的に示さなければなりません。
代表的な補助金として、多く利用されているものには下記のようなものがあります。
① 小規模事業者持続化補助金
小規模の事業者が、自社の売り上げ拡大のために使うことが出来る補助金です。
自社のホームページであったり、看板などの付け替えなど、売り上げをあげるための費用を補助してくれるものです。
補助率はかかった費用の2/3か、50万円のいずれか低い金額までです。だいたい毎年3月~5月ぐらいの間に申請する必要があります。
② 創業補助金(創業促進補助金)
新しいアイデアや技術をもとにして、新規に事業を立ち上げようとする人の創業資金に使うことが出来る補助金です。
これから開業する方や会社を立ち上げていこうという方が対象です。
補助率はかかった費用の2/3か、200万円までが上限です。
4月に募集期間となることが多いですが、採用されるためには「認定市区町村で開業する」などキビシイ要件があります。
なかなかハードルが高い補助金かもしれません。
③ ものづくり補助金
革新的な技術やサービスに対して、開発費用や販促費用に使うことが出来る補助金です。
製造業や開発サービスなどを手掛ける業種が対象です。
補助率は2/3で上限は1,000万円と大きいですが、専門家のアフターフォローが必要になりますので、相談は必須ですね。
募集期間は、1~3月になることが多い補助金です。
人に対する補助がメインとなるのは「助成金」
助成金は、基本的に人に対するものがメインとなります。
例えば、雇用を新たに創出したり、現在の雇用を維持するために支給されるようなものが、助成金であるとイメージしていただければよいかと思います。
- 昨年よりも給料を手厚くしました!
- ハローワークで人を採用する予定があります!
- 福利厚生の一環として資格取得を補助します!
こういうコトをやっていこうとしている方には、助成金の申請をオススメしたいです。
助成金は、一定の基準を満たしていれば、基本的に受給することができます。
募集期間も限定されていないものが多く、年間を通して給付申請をすることが出来ます。
雇用保険料が給付財源となっているので、
- 新たな人の雇用を増やすようなもの
- 労働環境を整備するための支出
など、雇用に関係するものが支給要件となっているケースが多いようです。
従って、一方的な会社都合による解雇などをすると、助成金の支給対象から外されてしまうこともあるので注意してください。
代表的な助成金としては下記のようなものが挙げられます。
① トライアル雇用奨励金
ハローワークの紹介で若年者などを雇った場合で、一定の要件を満たすと、対象者1人あたり月額最大4万円が支給されます。(上限は3か月で12万円)
② 特定求職者雇用開発助成金
新たに高年齢者、障害者、母子家庭の母などの就職困難な者を、ハローワーク又は一定の有料・無料職業紹介事業者の紹介により、継続して雇用する労働者として雇入れた事業主に支給されます。60万円から、最大で240万円の給付を受けることが可能です。
③ 雇用調整助成金
景気悪化など経済上の理由で、事業活動が厳しい事業主が、労働者を一時的に休業などさせた場合に、賃金の一部が助成されます。
リーマンショックの時には多くの企業が利用していました。
助成金は「ヒト=労働関係」に関する分野のものが多いので、社会保険労務士さんが得意にしている分野です。
もし助成金関係を貰いたいという方は、税理士よりも社会保険労務士に相談した方が間違いないと思います。
もちろん私に相談いただいた場合には、提携の社会保険労務士さんをご紹介させていただいています!
「餅は餅屋」なので、その道の専門家にお願いした方が、お客さんも私たちもメリットが大きいですからね~。
補助金・助成金どちらも給付は「支払いの後」
補助金と助成金の受け取りは、どちらも対象となる支払いをした後に給付される形となります。
たとえば「小規模事業者持続化補助金」で考えてみましょう。
まず、その売り上げ拡大のための資金は、自分自身で用意して支出しなければなりません。
実際に支出した金額に基づいて、その支払いを確認した後に、補助金や助成金が給付されるのです。
補助金にしても助成金にしてもすぐに給付を受けることはできないので、ある程度の自己資金の準備が出来ない方は、給付を受けるのは難しいといえます。
私自身もこの「小規模事業者持続化補助金」を受給しましたが、申請したのが5月であったのに、実際に入金になったのは翌年の2月でした。
補助金があるのは非常に助かるのですが、あくまで補助的な要素と考えた方が無難です。
補助金が無かったとしても、回っていくような事業計画を立てることが大切ですね。
融資と違い返済が必要ないのは大きなメリット
事業を経営する方にとって、返済の必要がない補助金や助成金は魅力的です。
確かに、申請を実際に行うには多くの書類の準備が必要ですし、補助金などは募集期間も決まっており期間も短いので、早め早めの対策が必要です。
認定支援機関や専門家のサポートが必要なものもありますので、興味がある方は専門家へ気軽に問い合わせましょう。
事業には資金が必要ですが、銀行融資の場合は審査が必要であり、返済額が経営を圧迫することもあります。
返済について考えると、なかなか新規事業にチャレンジするのも一歩踏み出せない、ということもあるのではないでしょうか。
そんな時こそ「補助金」や「助成金」の活用を検討してみてはいかがでしょうか?
新しいビジネスプランや事業計画にあった補助金や助成金がないか、確認をしてみてください。
もしかすればピッタリのものが見つかるかもしれませんよ!