人に親しみ深く名前で呼ばれると、恥ずかしいかもしれませんが、悪くない気分になるものです。この理由は、カクテルパーティー効果という心理学の原則に基づき、人は自分自身に関係のある情報について無意識のうち、より多くを得る脳の仕組みを持っているからです。この効果を活かした歴史上の人物として田中角栄があげられます。どのように活かしたのか?チェックしてみましょう。
名前で親しく呼びかけて人心掴んだ田中角栄
「〜〜くん、ありがとうございます!」「〜さん、これからもよろしくお願い致します!」「〜社長、本当に感謝しています。」
このように名前で呼びかけられて、悪い気がする人はあまりいないはずです。
実際に人と会話する際に、相手の名前で呼びかけることを意識して成功した人物は、歴史上で多々存在します。
その代表的な1人が、田中角栄(以下、角栄)です。
角栄は、郵政大臣として初の入閣を果たした時に、部下の名前を必ず覚え、相手を呼ぶ際は名前で呼びかけることを意識していました。
もちろん大勢の官僚たちに取り囲まれていましたから、名前を忘れてしまうこともありましたが、そんな時にキマって角栄はこう言っていました。
- 角栄:君の名前はなんだっけ?
- 官僚:△△(苗字)と言います
- 角栄:違うよ!苗字は知ってるよ〜。下の名前が教えて欲しいんだ。
こんな感じで、大卒エリートだらけのガチガチな官僚組織でも角栄は人心掌握に成功し、戦後を代表する総理大臣に上り詰めます。
自分のことが気になるカクテルパーティー効果
「人を動かす」の著者カーネギーも、人を動かす極意の6つ目に、相手を名前で呼ぶことをあげていますが、なぜ人は名前で呼びかけられると、相手に対して好感を抱くのでしょうか?
その理由は、カクテルパーティー効果に見出すことが出来ます。
カクテルパーティー効果とは、大勢が集まるパーティーに参加し騒音がうるさくても、自分に関係のある会話が自然と聞こえてしまう効果を言います。
- 人が自分の悪口を言っていることがよく聴こえる
- 電車の中でうたた寝していても、自分の降りる駅ではアナウンスに反応して目を覚ます
- テレビで自分の出身地が取り上げられると、見入ってしまう
これらは全て、カクテルパーティー効果の一例です。
人は自分自身に関係のある情報について、聴覚と視覚を通じて無意識のうちに、より多くを得る脳の仕組みを持っています。
実際に心理学の実験でも、これはまぐれではなく、統計として実証された効果として紹介されています。
フェイスブック広告で、「◯◯大学ご出身の皆様へ」という広告が良く出てきますが、これもカクテルパーティー効果を踏まえて、広告を見る読者と広告を関連付けることにより、注目を集めようとする手法の広告です。
更に、メールマガジンへ登録する際に名前やニックネームを入力すると、「◯◯さんへ」と自分宛にメールマガジンが届きますが、これもカクテルパーティー効果を応用したメソッドであり、開封率を上げることが目的の一つとなっています。
名前は生まれて以来一番聞いて親しむ音の一つ
さて、カクテルパーティー効果を発揮する上で、一番効果てきめんなのは、やはり名前を呼ぶことだと言われています。
なぜでしょうか?
その理由は、私達が生まれてきて以来、一番慣れ親しみ心地良く感じている音の一つが、自分の名前だからです。
冒頭でも述べたように、親しみを込めて名前で呼ばれた時に、気恥ずかしくも嬉しく感じるのは、これが大きな理由です。
角栄も初対面の官僚に対して、「◯◯くん、君のお母さんが病気だと人伝に聞いたが、何か出来ることあれば言ってくれ」とコミュニケーションを取り、一瞬で人心を掴んだと言います。
名前を覚えること、親しみを込めて名前で呼ぶこと、これらの行為にお金はかかりません。
一度意識して試してみるのはいかがでしょうか?