D&O保険とは、会社役員としての業務の遂行を原因として、保険の契約期間中に他社から損害賠償請求されたことで生じる損害を、保険期間中の総支払限度額いっぱい支払ってもらえる保険です。これまでは給与課税の対象でしたが、今年新たな保険料の税制改正が行われたことで、未上場会社にも加入しやすくなりました。株主訴訟のリスク回避などのため加入するのも一考です。
未上場会社の役員へD&O保険の間口が広がる
D&O保険とは、会社役員としての業務の遂行を原因として、保険の契約期間中に他社から損害賠償請求されたことで生じる損害を、保険期間中の総支払限度額いっぱい支払ってもらえる保険です。
この保険は、会社法上の取締役・執行役・監査役および執行役員などに加入資格がありますが、給与課税の対象であったために、上場会社特有の保険だとお考えの経営者さんも多いようです。
しかし、経営権をめぐる争いから、株主代表訴訟が提起されることが未上場会社でも増えてきています。
このD&O保険について、会社内での取り扱い要件が今年緩和され、未上場会社でも給与課税免除取り扱いが出たために、役員をD&O保険に加入させやすくなりました。
以下、どのように保険の取り扱いが変わったか、詳しく見ていきましょう。
これまでのD&O保険・これからのD&O保険
これまでのD&O保険の取扱はこうだった
会社役員賠償責任保険は、会社法(商法)上の問題に配慮し、従前、普通保険約款等において、株主代表訴訟で役員が敗訴して損害賠償責任を負担する場合の危険を担保する部分(以下「株主代表訴訟敗訴時担保部分」といいます。)を免責する旨の条項を設けられ、別途、当該部分を保険対象に含める旨の特約(以下「株主代表訴訟担保特約」といいます。)を付帯する形態で販売されてきました。
また、株主代表訴訟担保特約の保険料についても、会社法(商法)上の問題に配慮し、これを会社が負担した場合には、会社から役員に対して経済的利益の供与があったものとして給与課税の対象とされていました。
国税庁が今年公表したD&O保険の取扱
このような状況の中、コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会(経済産業省の研究会)が取りまとめた報告書「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」(平成27年7月24日公表)においては、会社が利益相反の問題を解消するための次の手続を行えば、会社が株主代表訴訟敗訴時担保部分に係る保険料を、会社法上適法に負担することができるとの解釈が示されました。
「株主代表訴訟補償特約」の保険料を会社が負担した場合の、給与課税の免除の扱いとして給与課税免除の条件は、
- 【1】取締役会の承認
- 【2】社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意又は社外取締役全員の同意の取得
の何れも満たせば良いこととなったのです。
参考資料:「新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いについて(情報)」(H28/2-24)
役員に高い倫理観求められる事実は変わらない
D&O保険は、給与所得者に比べて法律で保護されることが少ない役員にとって、今後ますます必要とされる保険です。
東京海上日動や、三井住友海上など、各損保で取り扱いがあります。
ただし、この保険においても、私的な便益を図った場合や、法令違反が悪意であった場合の損害賠償案件では、案件の内容如何で、補償額が支払われない場合があります。
保険の給与課税免除取り扱いが出て、加入しやすくなったとはいえ、高い倫理観が役員に求められることに変わりはありません。