今や日本人の75%が加入している入院保険。本来は公的医療保険制度で医療費をまかなえるにも関わらず、曖昧な動機で加入して損をされる方も多いようです。そこで本稿では、やり手ファイナンシャルプランナーの赤井さんが、入院保険が必要な人と必要でない人について、ズバッと教えてくれます。
日本人の4人に3人が加入している入院保険
日本人の80%以上が加入している生命保険。
さらにそのうちの75%が、「疾病時に支払われる生命保険」いわゆる「入院保険」に加入しているそうです。※
テレビCMやweb広告でも、一番多い保険のコマーシャルは入院保険ですよね。
一方で、「入院保険は入るな」といった書籍、コラムも最近目にするようになりました。
外資系や新興の損保系生保会社が主に販売している入院保険。本当に入らなくて良いのでしょうか。
現行の公的医療保険制度をおさらいしてみよう
まず民間入院保険の是非を問う前に、必ず理解しておきたいのは公的保険制度です。
ポイントは
- 医療費の自己負担
- 高額療養費制度
の2つです。
まず医療費の窓口自己負担は、私たちは3割です。(20~69歳/現役並の収入がある70歳以上)
つまり手術で50万円かかっても、窓口負担は15万円ということになります。
次に高額療養費制度ですが、これは上記の自己負担した3割の金額から、さらに一定の上限を超えた部分を払い戻す制度です。
2015年1月から制度が改正され、収入による対象額がより細分化されました。
つまり上記の例のように治療費50万円、窓口負担が15万円だった場合でも、表の区分③に当たる人なら
80,100円+(500,000-267,000円)×1%=82,430円
が自己負担上限金額なので、申請すれば67,570円が戻ることになります。
3割負担の制度は自動的に受けられますが、高額療養費制度は原則申請しないと受けられません。
事前に申請に必要な手続きや申請書については、加入されている医療保険の保険者までお問い合わせください。
公的医療保険を踏まえた入院保険の優先順位
入院1日10,000円、手術時に10万円が受け取れる保険の保険料が、40歳男性で月々6,000円だとします。
80歳までに支払う保険料は288万円。
この金額の元を取ろうと思うと、200日入院+手術9回の手術、などけっこうな病気にならなければなりません。
そう考えると高額療養費制度を受けられれば、「入院保険は要らない」という方の主張も分かります。
実は私自身、保険の相談者には「入院保険の優先順位は一番下」と伝えるようにしています。
今の公的医療制度を考慮すれば、「民間の入院保険に入っていなかったら破産していた…」という事はあまり起こりません。
それよりも働き盛り世代の死亡保険や、同じ病気でもガン保険のほうが、大きなリスクを避けるために必須だと考えるからです。
本音で語る:入院保険の必要な人と不要な人
ではいよいよ「入院保険は要らない」という話になりそうですが、私は加入しています。しかもけっこうしっかり。
それは事業主、中小零細企業では自分自身の身体が資本だから。
入院費があまりかからなかったとしても、その間の収入は途絶えます。その所得補償のための必要経費として考えているからです。
もちろん「元は取れない可能性のほうが高い」のは承知の上です。
また先進医療の自己負担や、入院時の差額ベッド代などは3割負担、高額療養費制度の対象外です。つまり全額自己負担。
思わぬ負担が家計にかかってしまう例を、何度も見てきましたので、やはり入院保険は必要だと思っています。
またGDPの1割以上、約40兆円にのぼる国民医療費が、今後も厚い公的医療費制度を維持できるとは思えません。
入院保険の要・不要は信頼できる専門家へ相談
大きな入院保険が要らないのは次のような方かもしれません
- 大企業の正社員で、病気の際の福利厚生が充実している
- 緊急用の貯蓄を十分備えている
- どうしても元を取れないと嫌だ
最近ですと元を取れる入院保険も登場しているので、最後の方はご相談ください(笑)
特に若い世代に、「とりあえず入院保険だけには入っている」という方がいます。前述しましたが入院保険の優先順位は最下位。
とりあえず分からずに入るくらいなら貯蓄したほうが賢明です。
何となく高い入院保険に入ってしまっている方は、自分にはどの程度まで必要かを、一度ファイナンシャルプランナーに相談してみても良いかもしれませんね。
※平成25年度 生活保障に関する調査・生命保険文化センター
http://www.jili.or.jp/research/report/chousa10th.html