「子育てとの両立や収入面の不安がある」と思われるシングルマザーの女性に向け、ファイナンシャルプランナー(FP)の氏家祥美氏が「女性起業」の相談に携わる立場から起業するメリットを解説してくださいます。シングルマザーが「起業して終わり」ではなく、堅実に経営を続けていくための、行政によるサポート内容などについても紹介してくださいます。
シングルマザー・子育てと仕事両立の鍵は環境
離婚を決意した女性にとって、これからの生活をいかに成り立たせるかは重要な問題です。これまで、ファイナンシャルプランナーという立場で、行政主催のシングルマザーの就労支援セミナーで講師や相談員を何度もしてきました。
そこで出会った女性たちのうち、離婚をして何年もたっている人たちは、結果として仕事を掛け持ったり、転職を重ねながら、子育てと両立しやすい職場に就職したり、ビジネスを自分で立ち上げたりと、いろんな方法で子どもを育てている方ばかりでした。
離婚当初はプレッシャーや不安も大きかったけれど、子どもを育てなくてはいけないということから、とにかく真剣に走って何とかしてきたという人が多いように感じます。
一方で、離婚をしようと悩んでいる人のうち、いま専業主婦やパートタイマーという人は、経済的に離婚をしてもやっていけるのかという不安が大きくのしかかります。
シングルマザーの平均就労収入は月15万円
現在、日本にはひとり親家庭が146万1,000世帯あります。
このうち、約85%がシングルマザー世帯で、そのうちの80.8%が離婚原因となっています。
死別の場合には、多くの場合、民間生命保険会社から保険金を受け取ることができますし、また国からの遺族年金を継続して受け取ることができます。
しかし、離婚によるシングルマザー家庭は、生命保険も遺族年金もないため、より経済的にきびしい状況となります。
2011年全国母子世帯等調査によると、シングルマザー家庭の平均年間収入は291万円ですが、このうち就労収入は181万円しかありません。
仕事で15万円稼ぎ、手当や養育費等をあわせて月24万円で生活している計算になります。
一方、シングルファザー家庭の平均就労収入が360万円、平均年間収入が455万円ですから、シングルマザー家庭がいかに厳しい状況にあるか理解いただけると思います。
とはいえ、この労働収入15万円は、家族で生活するとなると厳しい金額ですが、普通にパートタイムをやっているだけではかんたんに稼げる金額ではありません。
時給1000円だとしても週休2日で1日7時間30分働く計算になります。パート契約の時給では、仕事を掛け持ったりして正社員並みに働いてやっと15万円稼げるということになります。
シングルマザーが起業する3つのメリット
正社員やパートの掛け持ちをしているシングルマザーもいれば、ビジネスを自身で立ち上げる―起業をしているシングルマザーもいます。
では、彼女たちにとって、起業することの魅力はどのような点にあるのか?3つあげてみます。
1)子育てと両立しやすい
近年は、高速のインターネット環境が整備されていますから在宅で働けるスキルがある人にとっては、自宅をベースに仕事がしやすくなっています。
また、打ち合わせなどで子どものいる自宅は使えない、ホームページに自宅を掲載するのは怖いという場合には、打ち合わせなど必要な時にだけ利用できるレンタルサロンや、住所を借りられるバーチャルオフィスも近年ずいぶん増えてきました。
インフラが整備されてきたおかげで、子育てと両立しながら、コストをかけずに起業しやすい時代になっています。
2)想いをカタチにしたい
私が以前東北でシングルマザーセミナーをしたときには、「離婚過程で行政書士さんにお世話になったから、私も行政書士を目指している」という女性に何人も会いました。
また、夫からのDVがきっかけでカウンセリングを学んで独立した人、メイクアップ技術を学んでシングルマザーや再就職女性を支援している方もいます。
3)収入に上限がないこと
パートタイムでは、毎日フルタイムで働いても月収15万円にしかなりませんが、起業の場合、事業のやり方次第ではもっと短時間で多くの収益を生み出すことができます。
行政サポートもフル活用し、堅実な経営を!
ビジネスは立ち上げるのは簡単でも、継続して利益を生み出し続けるのはそう簡単ではありません。
家族を養うという立場である以上、リスクを押さえつつも堅実に利益を生み出したいシングルマザーの起業では、行政のサポートをフル活用することをお勧めします。
最後に行政のサポートのフル活用方法について触れたいと思います。
1)起業相談も行う男女共同参画施設や女性センターを活用すべし
頼りになる施設としては、男女共同参画施設や女性センターがあげられます。
これは、女性の就労や子育てなどを推進する公的な施設で、さまざまなセミナーや相談が無料や安価で受けられます。
すべての施設ではありませんが、起業セミナーや起業相談を行っているところもあります。
女性を応援する公的な情報が集まっている施設ですので、起業をするしないにかかわらず足を運んでおくと、なにかと役に立つことでしょう。
2)資金調達なら日本政策金融公庫の金利が低くておすすめ
事業のために貸付金が必要な時には、日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金(新企業育成貸付)」の金利が低くてお勧めです。
3)ビジネスプランコンテストで入賞したら賞金ゲットも!?
また、各地域で開催されているビジネスプランコンテストなどを探して、エントリーするという方法もお勧めです。
うまくいけば賞金をもらえるだけでなく、ビジネスプランをカタチにするための専門家のサポートを受けられる可能性もあります。
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ハートマネー代表・ファイナンシャルプランナー
氏家 祥美
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Photo credit: iandeth via Visual Hunt / CC BY