会社を新規に創業すると案外費用がかかります。特に会社の登記で事務手続きに係る費用は、「創立費」として設立後の会社における経費として損金算入が可能な費用です。では会社の創業記念パーティを設立時(前)に行った時の費用は、創立費として経費算入可能でしょうか?正しい経費算入方法を提示し、起業時のあるべき姿についても触れてみたいと思います。
会社を創業する時は案外経費がかかるもの
会社を新規に創業しようとすると案外費用がかかります。
近年では会計ソフトfreee(フリー)が提供する「会社設立freee」のように、一人でも手続きに必要な書類をインターネット上で簡単に作成できるようになりました。
それでも創業時には
- 印鑑作成費用
- 定款および諸規則作成のための費用(手続きを行う司法書士等の人件費含め)
- 設立登記の登録免許税
などの費用だけで、ざっと20万円近くは用意する必要があります。
これら事務手続きに係る費用は会社が登記簿に登記される前であっても、「創立費」として設立後の会社における経費として損金算入が可能な費用です。
これ以外に、会社設立前に創業メンバーに準備で動いてもらった時の給与も、創立費に算入することが可能です。
なお、創立費は任意償却が可能なため、経費算入する年度は自社で自由に決められる便利な勘定項目です。
会社設立時のパーティー費用は経費になる?
しかし会社設立時にかかる費用はこれだけではないはずです。
会社は自分一人の力だけで立ち上げられるものではなく、様々な人のお世話になり、協力を得て実現されるものです。
自分を支えてくれる立ち上げメンバーはもちろん、金融機関へ有利な条件で口利きしてくれる人がいたり、一時的に資本金を貸してくれる人(親・親族・協力者)がいたり、顧客を紹介してくれる人がいて、はじめて創業が成立するため、これらお世話になった人への感謝を示すために、創業記念パーティを開催したいと考える場合もあるはずです。
この時にかかる費用は、創業前であっても経費算入することが可能なのでしょうか?
結論は「YES」、経費で創業記念パーティの費用を落とすことは可能です。
ただし、創業前であっても創業記念パーティ費用は「創立費」で落とすことはできません。代わりに、「創業した1期目の福利厚生費」と「創業した1期目の交際費」を利用して経費算入することになります。
福利厚生費か交際費かの判断については、
- 創業時に関わった創業メンバー全員を労うとき:福利厚生費
- 創業時にお世話になった人や取引先を交えたとき:交際費
で判断することになります。
何でも経費で落とすとかえって財務に悪影響
創業時は経営者にとって様々な人に自分が支えられていることを痛感する、人間としても成長できる時期です。
同時に自分の立場が、雇用される側から雇用する側へ変化することでお金に関する自由も増えます。
ただし、ここで特にサラリーマンから新米経営者になった場合、陥りやすい罠が存在します。
お金に関する自由が増えることは、それだけお金に関するリスクも自分にのしかかるという事実を見逃してしまうことです。
創業記念パーティを開催して、多くの人が払ってくれた労苦に対するねぎらいを表現することは正しい行為です。
しかし中には「そこまで豪華なパーティを開催して本当に大丈夫なのか?」と感じるくらい派手な創業記念パーティを開く人も存在します。
パーティ費用は経費で落とすことが可能ですが、身の丈にあった創業記念パーティとすることを忘れてはなりません。
一期目から黒字を出せば、パーティ費用を経費で落とすことは損金算入を通じて節税対策につながりますが、一期目から黒字を確保できる保障はどこにもありません。
赤字になれば節税対策などそっちのけでキャッシュ・フローが厳しくなり、お金が流出した分、経営には厳しい現実がつきつけられます。
そうであれば、自分の今いる経営上のステージはどのレベルか?を適正に判断し、できる範囲(お金やパーティの見栄えだけではない)で自分にできる精一杯の感謝を見せるほうがよっぽど賢明です。
周りの人たちも、貴方のビジネスに対する真剣さを感じ、賢明な経営者として認めてくれることでしょう。
創業時の第一歩目から経営者には節約の精神を持って、行動することが求められます。