自動車部品世界シェア1位のデンソーが、業務効率化や生産性向上を実現する朝方勤務を奨励するために、朝食の無料提供制度を試験的に始めることが発表された。社員食堂や食事の提供が無条件に福利厚生としてあって、社員もそれが当たり前と考えている会社は多いが、利益の出ている会社ほど社員の食すら仕事と結びつけて考えていることがわかる。
デンソーは知らないところで生活の中にある
デンソーは「DENSO」というロゴでおなじみの自動車部品のトップメーカーで、エアコンや電子制御部分の高い技術力を誇る。
元来トヨタ自動車の「電装部」という1部署が独立し、「日本電装株式会社」という会社名として創業した経緯があり、現在の社名「デンソー」となってからはまだ20年にも満たない。
しかしながらトヨタ車の部品周りを一手に引き受けていることもあり、2009年以降は自動車部品世界シェア1位の称号を手にし、連結売上高も4兆円超の企業に成長した。
カーエアコンが事業の主力製品である一方で、携帯電話でインターネットURLを読み込むための「QRコード」の開発も同社が行った。
またCMで良く放映される給湯器「エコキュート」も、電力会社などと共同開発を行うなど、デンソーの製品は今や幅広い製品やサービスを通じて私達の生活に入り込んでいる。
デンソーが社員に無料で食事提供開始の狙い
デンソーは5月11日(月)に、社員に無料で朝食を提供開始することをリリースした。
目的は、朝型勤務を奨励するためである。
デンソーはもともとフレックス制度を採用しており、そのコアタイムを短縮した上で制度を導入する。
併せて夜8時以降の残業も禁止される。
今回の取り組みの対象者は本社勤務の全職員3分の1(13,000人)に限定され、7月〜9月の3ヶ月間という期限付きでテスト期間を設けて行われる。効果を検証した上で横展開を検討するという。
今回の取り組みについてデンソーは「一人ひとりが時間への意識を高め、限られた時間の中で高い成果を追求する働き方への変革を進めていきたいと考えています。」と狙いをコメントしている。
深夜残業により割増賃金を支払うより朝食代負担したほうが会社はコストも抑えられ、社員も残業時間が減れば余暇を過す時間が拡大するため、双方にメリットがある政策だ。
利益の出ている企業ほど社員の食を利用する
社員食堂や食事の提供が無条件に福利厚生としてあって、社員もそれが当たり前と考えている会社は多い。
その場合は、いくら社員にサービスしても意味がなく、かえって経費の無駄遣いになってしまう。
なぜ食事を提供するのか、社員が理解しているか否かの違いは大きい。
好例として、社員のメタボを防ぎ自社商品(体重計)のブランド価値を高めるために「食堂」が存在するタニタ、業績連動型・目標達成した時に食事を無料提供するヤフーなどは、いずれも作業効率化や時間への意識を高めるために社員食堂を役立てている。
利益の出ている会社ほど、コスト削減や生産性向上、作業の効率化に取り組むために、社員の「食」すらツールとしているのだ。
今回のデンソーが行う朝食提供の取り組みも、同じように成果をあげるか今後に要注目だ。