2016年の4月から政府は国家公務員約20万人を対象として、フレックスタイム制を導入する方針を決定した。実はこの10数年、日本ではフレックスタイム制度を新規導入する企業が減少している。しかし労働の対価を時間から成果へ変更しようとする、残業代ゼロ法案を推進するためにも、政府は今回の試みをしくじることができない。
国家公務員にフレックスタイム制度が導入
2016年の4月から政府は国家公務員を対象として、フレックスタイム制を導入する方針を決定した。
対象となるのは全国約20万人の公務員で、自衛隊など一部の公務員は除く。
公務員の労働時間や労働規定は、原則的に副業ができないなど、法律で細部に渡り厳格に定められている。そのため今回の決定は、非常に大きな決断に基づくものであると言えよう。
なぜ政府は、今回のフレックスタイム制度を奨励する動きを取ったか紐解いていこう。
フレックスタイム制度を政府が導入する理由
そもそもフレックスタイム制度とは、労働者自身が一定の定められた時間帯の中で、始業及び終業の時刻を決定することができる変形労働時間制度のことである。
働き方が自由になったと言われる日本だが、実はこの10数年、制度の新規導入を図る企業は減っている。また、導入しているものの活用していない企業が多いのも実情だ。
時間軸を切り口にしたこれまでの就業形態に対して、成果にフォーカスを当てたフレックスタイム制度が馴染んでいないのが大きな理由だ。
それでも政府は否が応にもフレックスタイム制度を浸透させる必要がある。
残業代ゼロ法案を含んだ労働法改正が決定したばかりで、残業代ゼロの雇用対象を更に広げることを、多くの経済団体(経営者側)から求められているからだ。
残業代ゼロ法案は無駄なコストを減らし、効率的な人員配置を民間企業へ促すことで、経営者に多くのメリットを与える。また、すべての従業員が勤務時間内に仕事を終えれば残業代は発生せず、かつ従業員も自分のために利用できるオフの時間帯が大幅に増える。
しかし現実的にはそうもいかず、一部の従業員に業務が偏り、現状では確実にサービス残業人口が増えることが予想される。
このままでは残業代ゼロ法案が、大半の国民に避難されてしまうのだ。
国家公務員へのフレックスタイム制度導入には、これら背景を踏まえ、なるべく残業代ゼロを実現するため、政府自らが見本となる意思が見て取れる。
フレックスタイム制度の導入によるデメリット
フレックスタイム制度には以下2点のデメリットがある。
- ・横連携(取引先、他部署、チーム)の時間設定やリアルなコミュニケーションが難しい
- ・フレックス=自分勝手に自由に動いて良いと勘違いしてしまう従業員が生じる
政府は、国全体、社会全体が当たり前のようにフレックスタイム制度の導入を図るようになれば、これらのデメリットが解消されると考えているのであろう。
20万人もの人々が、一斉にフレックスタイムで働き始め、理想の就業形態を実現できるか来年の春が見ものだ。