事業承継の中でも近年注目を浴びる「事業譲渡」
M&Aは近年、経営者の高齢化や人口減少による後継者問題を解決する有効な手段として注目を浴びています。中小企業の事業承継におけるM&Aは活発に行われており、国内有数の大企業でも、事業拡大や成長戦略の手段としてM&Aを繰り返しており、ニュースなどでもよく報じられます。
さて、M&Aの手法は様々あり、譲渡企業のニーズによって使い分けられますが、経営状況や引き継ぐ対象によっては「事業譲渡」という手法が適していることをご存知でしょうか。
事業譲渡なら事業の一部を切り離して譲渡することで引退後・老後の生活資金に充てたり、事業を現金化して会社に資金的な余力を残すこともできます。
会社法でいう「事業譲渡」「事業」とは?定義を簡単におさらい!
みなさんは、事業譲渡とは何かご存知ですか?
事業譲渡とはM&Aの手法の一つであり、会社の一部または全部の事業を第三者に譲渡(売却)することを指します。
ここで言う「事業」とは、対象となる事業を行うために企業が組織化し、機能している財産すべてを指しています。
例えば商品などの物、工場などの設備、不動産・動産、事業組織など、そして財産や債務、人材、ノウハウ、ブランド、特許権、取引先との関係などが含まれます。
譲渡企業・譲受企業にとって事業譲渡を行うメリットは?
事業譲渡を行うメリットとしては、譲渡企業からすると、不採算事業を切り離して売却益を中核事業に注ぎ込むことにより、経営の健全化を図ったり、本業は売却して経営負担の少ない事業のみで営業を続け、引退後・老後の生活資金を賄うといった使い方ができます。
二つ目のメリットとして、後継者のいない事業を他社に譲渡することによって存続してもらえる、譲渡企業の法人格を残せる、事業再生の一手法として使えることがあげられます。
譲受企業側にとっても、必要とする事業や従業員、取引先などを選んで譲り受けることができるため、集客力増加や株式上場のための規模拡大、簿外債務のリスクがない、節税効果が得られるといったメリットがあります。
事業譲渡のパターンと会社法の特別支配会社
事業譲渡には複数のパターンが存在しており、そのパターンによっては手続きに違いが出る場合があります。
例えば、譲渡する事業が事業の全部、または重要な一部であって譲渡企業の総資産の20%を超える場合には、譲渡企業は株主総会(特別決議)での承認が必要となります。
また、他の会社の事業の全部を譲受ける会社も株主総会の特別決議が必要です。
一方で、取締役会設置会社の場合は、重要な財産の処分または譲受として、譲渡企業・譲受企業ともに取締役会の決議が必要です。
ただし、譲受企業が譲渡企業の株主総会における総株主の議決権の90%以上を持っている場合、譲受企業は「特別支配会社」となり、本来なら必要な譲渡企業側の株主総会特別決議での承認は不要となります。
また、譲渡企業が譲受企業の特別支配会社であるときは、譲受企業において株主総会特別決議は不要です。
事業譲渡の手続きとスケジュール
事業譲渡の手続きの大まかな流れとしては、事業譲渡の内容を決める→承認決議→債権者や株主の保護手続き→事業譲渡完了、となります。
まず譲渡企業は、譲渡先となる譲受企業を探します。譲受企業と面談を行い、それにより譲渡する事業の範囲、受け継ぐ資産や負債などを決めて基本合意書を締結します。
その後、弁護士や会計士などの専門家による買収調査(デューデリジェンス)を行い、取締役会で決議を行います。
事業譲渡契約を締結したら、有価証券報告書提出会社であって法令に定める条件に該当する場合は、臨時報告書を財務局へ提出します。
それから株主に対する通知または公告を出し、株主総会を開催、移転に伴う財産や契約などの引き継ぎや手続きなどを行い、契約を締結させます。
以上が大まかな事業譲渡の手続きとスケジュールになります。
事業譲渡を行う際は専門のアドバイザーに相談しよう!
事業譲渡は、会社の財産や負債などを移転させ、様々なメリットを享受するM&A手法の一つです。
事業を譲り渡すには様々な要因が含まれ、手続きは難しくなりますが、中小企業にとっては、その手続きの手間以上のメリットを受け取ることができます。
最近では、従来のM&Aにおいて課題とされていた営業による属人的な手法から、プラットフォームを活用することにより様々な地域や業界から譲渡を希望している企業を選択し、マッチング後は専門のアドバイザーによる親身なサポートによって事業譲渡を成功に導いているM&A仲介会社があります。
実際にM&Aで事情譲渡を検討している方は、TRANBIやFUNDBOOKのような、中小企業を中心に事業譲渡を行っているM&A専門の会社に相談することで、スムーズに事業譲渡を行うことができるでしょう。