ドラマ「半沢直樹」が終了してまもなく2年。 ドラマの代名詞ともいえば”土下座シーン”だが、現実の世界で取引先はたまた社内の人間へ土下座を強要することは、刑法の強要罪にひっかかったり、パワーハラスメントで訴えられる可能性が生じるので絶対にやめておこう。ビジネスにおける威圧的かつ感情的な表現にはリスクがあるのだ。
ドラマ半沢直樹から2年 思い返す土下座
ドラマ「半沢直樹」が終了してまもなく2年。
「やられたらやり返す、倍返しだ」という名言は社会現象にまでなり、視聴率低迷にあえぐドラマ業界において、最終話は関東42.2%、関西45.5%を記録した。
この数字は平成になってから歴代No.1視聴率となる。
続編を望む声が大きいことは、Googleで検索をかけると一番最初に「半沢直樹 続編」とサジェストされることからもわかる。
ドラマの代名詞ともいえば”土下座シーン”だが、主人公の半沢は、敵である大和田専務・小木曽次長・浅野支店長など、目上のポジションにある人間を次々と土下座させた。
現実的に取引相手や、社内の人間に土下座をさせると、一体どうなるのだろうか?
土下座をさせると刑法にひっかかる可能性も
そもそも土下座とは、「土の上に座る」ことから名付けられている日本の礼式の一つで、深い謝罪を意味する。
古くは邪馬台国の時代から存在しており、江戸時代には土下座をすればたいていのことは許してもらえる、という風潮があった。
では現代において、「土下座をさせること」は法的にどのような解釈を下されるのだろうかといえば、刑法第233条の「強要罪」で、罪に問われる可能性がある。
刑法第233条の条文は以下の通りだ。「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。」
土下座行為は、「義務のないことを行わせている」と解釈されるのだ。
強要にあたらないと判断されたとしても、民法709条「不法行為による損害賠償」により、パワーハラスメントの観点から、責を問われる可能性もある。腕をつかんで土下座をさせるなど、身体的な害を与えた場合は、これに加えて刑法204条の「傷害罪」にも触れることになる。
ドラマの多大な影響からなのか、コンビニや小売店舗で客が店員を土下座させるた事件も記憶に新しい。
では半沢直樹の場合も、強要罪で告訴されるのだろうか?
答えは「NO」だ。なぜなら半沢直樹は、土下座させた人間に対して前もって、非が相手にあった場合は土下座することを承諾させているため、強要しているとは言いきれないからだ。
ドラマのハイライトシーンとして有名な、大和田常務を土下座させた場面も、事前の回で大和田常務の承諾をもらい済みである。
さすが半沢直樹、どこまで行っても頭が働く。
ビジネスにおける感情的表現はリスク大きい
社内、取引先、上下関係、仕事をする上では、対人コミュニケーションなくして何もできない。従ってトラブルはだいたい人間関係で起きる。
しかし相手に腹が立ってキレるとしても、気持ちの高まりをストレートに伝えることは控え、ましてや土下座をさせる、ということはないようにしよう。
威圧的・感情的な表現を相手に浴びせることには、前述のとおり法的なリスクはもちろんのこと、人間関係のトラブルを更に複雑化させてしまうリスクが付いて回る。
万が一、相手が自発的に土下座をした場合でも優しく手を引き上げ、これからの新しいビジネス展開につなげるのが得策だ。