星野リゾートがイシン・ホテルズ・グループの株式を取得
星野リゾートが外資系のホテル運営会社、イシン・ホテルズ・グループ(以下、イシン)の株式を取得して資本提携したことを発表しました。
参考リンク:星野リゾートが外資と資本提携:信毎Web
イシンは日本国内で「ザ・ビー」ブランドのホテルビジネスを15箇所で運営しています。
星野リゾートは、IT戦略や顧客開拓、それに加えマーケティング面において多大な実績を持っているため、同社には資本提携をするメリットがあります。
オリンピックに向けて、日本の大都市へのインバウンド需要が見込まれることもあり、ますますの追い風と言えます。
一般的に危険と言われる50:50の株持ち合い
ただ1つだけ気になったのが議決権比率です。2社が、星野リゾート50%、現株主50%と、50:50で株を持つことです。
議決権が50:50でない可能性もありますが、一般的に株式の持ち分が50:50となる議決権比率の合弁会社は大変危険で、日本以外ではほとんどありえないと考えられていました。
理由は、誰が責任を負うのか、はっきりしないためです。
問題なく事業が進んでいる間はよいのですが、ビジネスですから良い時もあれば、悪いときもあります。
問題は悪い時です。そのときに、責任を負う、決断をするのが誰かはっきりしないのが、持分50:50の状況です。
たとえば、思ったよりも経営がうまくいかず、撤退を決めなければいけないときに50:50の持分では決まらないことも多いはずです。
従って、私は資本提携をする際に絶対に50:50は勧めません。
星野リゾートがそれを知らないはずもありません。では、なぜ50:50でも資本提携したのでしょうか?
イシンがホテルを運営する立地を見ると思い当たること
おそらくですが、その理由の1つは星野リゾートリート投資法人にあります。ちなみに同社の業績は目下続伸しております。
業績を牽引するのが星野リゾートに買収され、同社REITに組み込まれている、都市型ホテルです。
たとえばANAクラウンプラザなどが、その筆頭格です。
実際に同社REITに組み込まれている物件の稼働率を見てみましょう。
山梨県北杜市:リゾナーレ八ヶ岳
福岡県福岡市:ANAクラウンプラザホテル福岡
リゾナーレ八ヶ岳の稼働率は季節要因によって60%から90%台までブレます。おまけに冬季だからだと思われますが2〜3月は稼働率0です。
対してANAクラウンプラザホテル福岡は、最低の稼働率が77%台、シーズン通して80%から90%台の安定した稼働率を誇ります。
平均すれば2つのホテルの「平均稼働率」は似通ったものとなりますが、シーズン通して固定コストが標準化できる点では、ANAクラウンプラザホテル福岡にコスト削減の分があります。
イシンの運営する15箇所のホテルは、八王子にあるものを除けば、いずれも人口100万人以上の政令指定都市、しかもその都心に存在します。
都市型ホテルを買収するメリットは、安定した稼働率があり、業績の見通しを立てやすい点にあります。
星野ブランドがバックにつけば集客効果は高まり、これによって稼働率が更に上がれば、「ザ・ビー」ブランドはREITを牽引する稼ぎ頭となることでしょう。
これらを踏まえると、対等なパートナーとして迎える姿勢を示すことで、円滑に手を組みたかった。実は星野リゾートのほうがイシンと手を組みたかったのでは?と思うところです。