社員の服装は憲法13条を根拠に、最大限尊重することが企業へ求められている。企業のダイバーシティ化が進んでいるとはいえ、厳しい目を向ける第三者は一定多数いるのも現実だ。さすがに憲法13条を抗弁事由として、鼻ピアスを社員がつけて会社に来られては困る。合法的に、就業規定で一定のルールを決めて、服装トラブルを防ぐことが業務効率化につながる。
服装が自由になっても鼻ピアスはさすがに…
「オフィスカジュアル、クールビズ、ウォームビズ」という言葉が浸透してしばらく経つ。
気温や気候に合わせた合理的な服選びや、「企業のダイバーシティ化」で、自由な服装はじめ、茶髪・パーマをかけても不問に帰す、など身なりが自由な職場は確実に増えている。
法律においては、憲法13条で「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定められている。
社員がどんな服装をしようと基本的には自由であり、現代の風潮も、憲法が定めているところへ回帰しているように思える。
ただし企業のダイバーシティ化が進んでいるとはいえ、厳しい目を向ける第三者は一定多数いるのも現実であり、場合によっては嫌煙して取引が破断となるきっかけとなってしまう。
実務への悪影響があるにも関わらず、憲法13条を抗弁事由とし、社員が鼻ピアスをつけて会社に来られては困る。
どのように、社員の服装へ一定のルールを定められるだろうか?以下検証しよう。
鼻ピアスは労働基準法で認められるか?
会社として社員の服装へ一定のルールを決める際に、有効的で合法的な方法は、業種などに鑑み「就業規定」で一定のルールを決めてしまうことだ。
とはいえ、あくまで業務を行う上で「社会通念上合理的」と判断されるものに限るため、「女性社員はタイトなミニスカートに限る」などといった、不届きな「就業規定」の作成は許されない。
合理性が認められる規定のうち、代表的なものとして以下例示する。
1)営業職など、社員の印象が業績に反映される場合
例えばジーパンで営業を行うと世間一般的には無礼である、と認識され会社の評判が落ちる可能性がある場合、就業規定で規制をかけることは合法的だ。万が一、社員が規則破りを悪意を持って行い、会社に損害が生じた場合は損害賠償請求を行うこともできる。
2)会社の風紀を乱すことが想定できる場合
鼻ピアスや目によくつく威圧的なタトゥが、社員の精神状態に不安感や悪影響を与えることが認められる場合、会社の風紀を乱し、公序良俗に反する服装として就業規定で禁止することが可能だ。
3)業種業態を考慮すると合理的な場合
接客業は人と多く接する、製造業は異物混入などのリスクがある、など業種・業態の客観的な事情に鑑みて、服装に規定を設ける(制服など)場合、就業規定に具体的な事項を定めることは認められる。
就業規定を自社に合わせバランスよく調整
ジーパンはだめだよね、襟付きシャツでないとだらしない、ゴムサンダルはNG、多くの企業では社員の良心や職場の雰囲気など、暗黙の了解で服装のルールを決め、済ませているケースが多いはずだ。
就業規定に服の規定を決めなくても、自分で社の空気を読めたり、社の風土に合う人を採用すれば、大きな問題は起きにくい。しかし「十人十色」という言葉があったり、世代間で服に対する感覚は大きく異なるため、一定のルールを先に定めておくことは業務の効率化にも役立つ。
新年度に、自社の就業規則内の「服装に関する規定」があるか考えてみるのはいかがだろうか?