より長期的な資産形成を促すことを目的として、平成30年1月から新しく「つみたてNISA」が始まります。
一般NISAの年間上限額が120万円であるのに対し、つみたてNISAでは40万円ですが、非課税期間が投資した年から20年あり、ドルコスト平均法を活用した長期投資が可能になります。
ある程度手堅い運用が期待できるため、この機会に始めることをオススメします。
平成30年1月から「つみたてNISA」が始まる
平成26年1月からスタートしたNISA(少額投資非課税制度)。年間元本120万円までの株や投資信託で得られた利益が、5年間非課税となる制度です。
専用口座数は平成28年末時点で1,060万件を超えていますが、実際の稼働率は60%程度であったり、利用している半数以上が50代以降の年齢層だったり、「貯蓄から資産形成へ」というスローガンがあらゆる世代に浸透しているかというと、まだまだ課題は多いようです。
そのような中でより使いやすく、より長期的な資産形成を促すことを目的として、平成30年1月から新しく「つみたてNISA」が始まります。
このつみたてNISA、いままでのNISA(以降一般NISA)と何が違うのでしょうか。
一般NISAとつみたてNISAは何が違うの?
主な相違点を一覧にしてみました。
つみたてNISAのポイントは以下の通りです。
ポイント① 年間非課税投資額 40万円
一般NISAの年間上限額が120万円であるのに対し、つみたてNISAでは40万円。額としては1/3です。
ポイント② 非課税期間 投資した年から20年
そのかわり非課税期間が20年。実に4倍。総額800万円の投資で得る利益が非課税となります。
ポイント③ 運用方法は「毎月積立方式」のみ
一般NISAではまとまった額の投資が可能でしたが、つみたてNISAではその名の通り積立のみです。
ポイント④ 投資対象は、一定の要件を満たす「長期投資に適した投資信託」に限定
非課税となる投資対象も条件があり、毎月分配型でない、売買手数料が無料など「長期投資に適した投資信託」に限定される予定です。
ポイント⑤ 途中引出しはいつでも可能
基本は基準価格の上げ下げに一喜一憂せず長期保有したいものですが、とはいえ機を見て投資をやめる、一時中断するなどの判断も時には大事。引出はいつでも可能です。
なぜ「つみたてNISA」は「つみたて」なのか?
そもそも「投資」というと、まとまったお金を運用する人がするものだというイメージがありますが、「つみたて」方式を取ることで時間分散となり、リスクを軽減する効果が期待できます。それをドルコスト平均法といいます。
基準価格にかかわらず、毎回同じ額を投資することにより、安いときには多い口数を、高いときには少ない口数を買い付けることとなり、結果として一定の口数を購入していくよりも平均買付価額を低く抑える効果が見込めます。
言葉にするとちょっとわかりづらいですね。では次の3つの異なる値動きをするファンドを見てみましょう。
手元に100万円あるとして、どのファンドに投資すれば最も利益が出ると思いますか?
「ファンドA」と答える方が多いと思います。もちろん正解です。
手元資金が100万円の場合、1口1,000円のファンドを1,000口購入できます。
基準価格が1,000円だったファンドが10年間で3,000円になったので、運用残高は300万円になりました。3倍です。
しかし「つみたて」の場合、決してAが正解ではありません。
一度に100万円を投資するのではなく、年間10万円を10年間に分けて投資するとします。
その間ファンドの基準価格は変動しますが、その価格に関わらず一定金額を購入するとなると、毎年購入する「口数」が変わることになります。
「高いときには少なく、安いときには多く」ファンドを購入することになるので、Aの場合は購入する口数が最も少なくなります。最終的に基準価格が高くても、買っている口数が少ないので、さほど大きな利益にはなりません。
では一番儲かったファンドはどれでしょうか。それは「ファンドB」です。
どんどん下降している間、安くたくさん買えています。それが最終的に当初の額に戻っただけで、資産は倍になっています。勝手にタイミング良く投資していることになるのです。
現実の相場変動を踏まえると「ドルコスト平均法」による運用を味方につけるべき
さて、実はこの話のキモは「ファンドC」です。
Aが上がり続けることが事前にわかっていれば、誰でも一括でAに投資します。また、一時下がるが絶対将来復活することが分かっていれば誰でもBを定期購入します。(もしくは底で一括購入します)
しかし、購入時にこんな動きをするとは予想できたでしょうか。答えはNOです。
どんな優秀なファンドマネージャーでも、上がり続けるファンドを運用する事は不可能ですし、また意図的に下降させて、再度上昇させる運用もありえません。(換金したいタイミングが「底」と重なってしまう人にとっては最悪のファンドになってしまいます。)
「上がったり下がったりする」Cが最も現実的ではないでしょうか。最終的に最初の額を下回っていても、それまでの間に「高いときには買い控えし、安いときにたくさん買う」ことを実践できているので、損失どころか、若干ですが利益が出ています。
購入を始めた時より値下がりした状態で換金しているのに、マイナスになっていない、つまり一括投資のリスクを軽減できたといえます。
この「上がったり下がったり」(これをボラティリティといいます)を味方にするのが「ドルコスト平均法」と呼ばれる投資方法なのです。
このドルコスト平均法においては「ほどほどのボラティリティがありつつ、全体的には手堅く上昇している」ファンドが最も優秀と言えます。
「つみたてNISA」はドルコスト平均法をフル活用できる
2017年1月から始まる「つみたてNISA」はこのドルコスト平均法で運用ができます。また長期投資に適している、と金融庁が認めた商品しか選択できないのである程度手堅い運用が期待できます。
いままで「投資はちょっと…」と踏み出せないでいた方も多いと思いますが、このつみたてNISAを機に資産形成を始めてみてはいかがでしょうか?
通常の投資信託を銀行や証券会社の窓口で購入することはあまりおススメしません(販売側の都合で売り込まれることが多いので…)。
しかし、つみたてNISAなら商品も絞られているので、窓口でいろいろ質問しながら始めても良いと思います。
また、年間120万円の従来のNISAに比べ、年間40万円は少し物足りないという方もいるかもしれません。
ただ、非課税枠を超えてはダメということはありません。つみたてNISA上限以上の金額は、一般口座で運用してください。
利益に対する約20%の税金がもったいない!という方もいますが、そんな方は大事なことを忘れています。なけなしの預金利息からも、約20%の税金が引かれているということを…。
どうせ納税するなら、大きく利益を出して、たくさん納税したいものですね。
※ドルコスト平均法は将来の収益を約束したり、相場下落時における損失を防止するものではありません。
※数字はあくまで仮定であり、将来の成果を約束するものではありません。また購入に関する手数料は含まれておりません。