どこの会社にもギャンブル好きの社員はいますし、プライベートで自分の趣味としてギャンブルを楽しむなら、それは本人の自由です。ただし、その社員がギャンブルにハマりすぎてお金を工面するため、他の社員からお金を借りたのに返さない、会社のお金を横領する、といった状態なら大問題です。当該社員はすぐにクビとしても大丈夫でしょうか?
ギャンブルにハマりお金を横領した社員はすぐに解雇可能?
あなたの会社にギャンブル好きの社員はいないでしょうか?
ただのギャンブル好きならまだしも、ギャンブル依存症の場合は少しやっかいです。
というのも、資力の範囲内だけでギャンブルする分には、個々の趣味を尊重すべきですが、中には借金をしてまでギャンブルにお金を使ってしまう人もいるからです。
カードローンならまだしも、恋人や配偶者にはじまり、次に親戚や友人、最後には社内の人間からもお金を借り始め、遂にはお金を返せない状態となってしまったとします。
もしくは、ギャンブルで作った借金の穴埋めをするために、会社のお金を横領してしまったとしたら?
経営者の耳にこれらの話が入った時、この社員へすぐに懲戒解雇処分を下して、首にすることは可能なのでしょうか?
社員がどれだけ悪くても一定の手続きを踏まえる必要がある
結論から言うと、ギャンブル依存症で他の社員へ迷惑をかけた社員は、十分な申し開きの場を用意しなければ、無闇に解雇することができません。
就業規則の中には服務規程という欄が設けられており、大抵の会社では、会社の信用を著しく毀損してはならない、仕事に関係のある人物へ不当に金品を要求してはならない、ということを定めています。
これらに違反した場合は、懲戒解雇を行うことは妥当です。
ただし、労働契約法第15条には、以下のような文言が定められています。
「使用者が労働者を懲戒することが出来る場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的理由を欠き,社会通念上相当と認められない場合は,その権利を濫用したものとして,当該懲戒は無効とする」
この文言が言いたいことは、「会社が気分によってやたらめったら社員の懲戒処分を下すのは無しですよ。」ということで、懲戒処分の濫用は許さないということです。
従って、いくら社員がギャンブルにハマって、他の社員からお金を借りるなど迷惑をかけていたとしても、
- 1)就業規則の解雇事由に該当すること
- 2)解雇理由について客観的な証拠を整えること
- 3)本人に申し開きの機会を与える
といった手順を踏まえる必要があります。
大きな問題ほど弁護士など第三者を介した手続きが必要
特に、これまでの判例を見ていくと、問題が発覚した際に、3)の「本人に申し開きの機会を与える」ことをしないと、懲戒処分を濫用したと判断される場合があり、注意が必要です。
たとえば、事情を話す場を作らずに、問題発覚の翌日にいきなり、会社にもう来なくて良いと突っぱねるなどするのは、会社の対応としては軽率です。
大きな問題に発展するような事由ほど、弁護士などを交えた場所で、集めた客観的な証拠をもとに、本人に事実確認をしたうえで、懲戒解雇の判断を下すようにすべきでしょう。