退職金制度は会社が任意で設定できるものであり、絶対に設定されなければならないものではありません。ところで法人企業では、社長も退職金をもらうことが可能ですが、個人事業主は退職金をもらうことは可能なのでしょうか?答えはNOです。なぜ個人事業主は退職金をもらえないのか?代替措置となる制度はないのか?解説いたします。
退職金制度は企業が任意で設定を選べる制度
4月になり、真新しいスーツに身をくるんだ新入社員の人たちが、多く見受けられる季節になりました。
そんな入社したてで気概に燃える新入社員でも、実は3年以内の離職率が3割以上にのぼります。
3年以内に1/3は辞めてしまうのです。
短い勤務期間でも会社を辞める時には退職金がもらえるのでは?と考える人も多いでしょうが、退職金は必ずもらえるものではありません。
大企業では退職金制度を設けているところがほとんどですが、制度が無くても違法ではありません。
中小企業では無いところのほうが多いでしょう。
社長が退職金を貰えて個人事業主が貰えぬ理由
退職金制度がなくても、社長が出そうといえば退職金が支払われることもあるかと思います。
このあたりは全くの任意ということになります。
働いている先が会社ではなく個人事業の職場(医者、弁護士、飲食店etc)であっても同じです。
退職金制度があれば支払われることになりますが、無ければ事業主の考え一つになります。
では、その個人事業主自身が退職金をもらうということはできるのでしょうか?
結論から言うとNGです。
事業主から事業主に支払う=自分で自分に支払うということになってしまうからです。
この点、会社の場合と大きく異なります。
たとえ自分(社長)が一人でやっている会社だとしても、会社(法人)と自分(個人)は別々の存在であり、会社から自分へ退職金を払うということは可能になります。
その場合、会社は費用として、個人は収入(退職所得)として計上することになります。
小規模企業共済が個人事業主の退職金代わりに
何の保証もないような個人事業主ですが、個人事業主にも退職金の代わりとなるものがあります。
その代表例が小規模企業共済です。
小規模企業共済は、国が作った経営者の退職金制度のようなもので、“小規模企業”となっていますが、個人事業主も対象となります。
その仕組みは、まず毎月一定額の掛金を支払います(この掛金は事業の経費ではなく、個人の税金を計算する際の所得控除として扱います)。
そして事業を廃業したときや誰かに譲渡したとき、共済金がもらえます。共済金は一時にまとめてももらえますし、分割でもらうことも可能です。
まとめてもらった場合には退職所得として、分割でもらう場合には、公的年金と同じ雑所得として税金を計算します。
民間の保険会社でも、似たような効果がある保険を販売しています。ですが、支払う保険料・受け取る保険金とも税金の扱いが異なってきます。
このあたりでも、小規模企業共済制度がかなり優遇されている制度といえるでしょう。