居酒屋のワタミを創業した渡邉美樹さんの本で推奨されている考え方の1つに、「夢に日付を!」というものがあります。夢をいつまでに達成すると日付を入れ、これを実行するために行動の具体的な日付まで設定し、行動するというものです。これに対して、島倉さんは「夢に日付を入れるなんてナンセンス」といいます。その理由を解説していただきました。
もう夢に日付を入れたって夢なんか叶わない
居酒屋のワタミを創業した渡邉美樹さんの本に、「夢に日付を!」というものがあります。
- いついつまでに〜の夢を達成するために夢に日付を入れる
- そのために具体的な行動の日付を設定し、これに合わせて行動する
- そうすることで大抵の夢は叶う
という考え方です。
皆さんの中にも、同じ考え方で夢に日付を入れていらっしゃる方がいるかもしれません。
手帳も出ていますから、これを買って実践しようとしている方もいらっしゃることでしょう。
しかし、夢に日付を入れても今の時代、もう実現することはまずありません。
その理由について話してみたいと思います。
夢に日付を入れるのがナンセンスな2つの理由
というのも、夢ってその時々で変わっていきますよね?
たとえば、私も経営コンサルティングの仕事をしていますけれども、最初に目指していた「こんな会社にする」という夢に対して、今の会社の姿は全く違うものですし、これから目指そうとしている夢も最初とは全く異なります。
なぜなら、いざ実践し始めると当初の夢で描いたように、計画通りに上手くいくことなんてないからです。
たとえば、夢に日付を入れると「最初はこっちが良いと思ったけれど、軌道修正してあっちに行ったほうが良い」と思った時に、素早く軌道修正が出来なくなってしまいます。
優秀な人・会社から一緒にやろうと言われ、より一層の高みを目指そうとした時に、動くことに億劫になってしまうこともあります。
それって、ビジネスでは凄くナンセンスなことですよね。夢なんて動いているうちに変わる、これが夢に日付を入れるのがナンセンスな1つ目の理由です。
それからもう1つ、ワタミさんが成長した時代は、高度経済成長から日本が消費を拡大する局面にありました。
寝ないで必死に頑張れば、どんなことでも達成できるんだ!という具合で、実際にそうすることで成功しやすい時代だったとも思います。
でも今は状況が変わっていて、より不確実性が高い時代なのではないでしょうか?
これからやろうと思ったビジネスを先にやられてしまったり、今やっていることが1年後に陳腐化していたり、そういうことが当たり前の時代になっています。
なぜか?それは、インターネットが出現したからです。
今までリアルでしかやれなかったことが、インターネットでも出来るようになったり、参入障壁の高かったビジネスのコストが劇的に下がったり、しかもそれが1年、下手すると数ヶ月、数日で起こるようになっています。
正確な日付をいれた夢が意味のないものになることもしょっちゅうです。
ビジネスで目標に日付をいれるなんて、今だと銀行と融資交渉するために、事業計画書を作成する時くらいだと思います。
自分達のために事業計画書を事細かに作るなんて、本当にムダな作業になりはじめています。
“Planed Happenstance(計画された偶然性)”の積み重ねでとにかく行動する者が最後に笑う
じゃあ、どんなふうに考えれば良いのか?という時に、1つのヒントがあります。
アメリカのスタンフォード大で論文が発表されて、日本だと神戸大学の金井教授あたりが最近研究しているのが、“Planed Happenstance(計画された偶然性)”という概念です。
金井先生のところだと、「行き当たりばったり」というふうにも訳しています。
何を言っているかというと、「個人がどんなに細かく夢やキャリアの目標を設定しても、その8割は偶発的なことにより決まっていくため、成功というのは偶然、その時々の状況に上手く対応することでしか手に入れられない」という理論です。
つまり、時々の変化に応じて柔軟に自分の考え方や行動を変えることが、成功に至る最短の道だということを、“Planed Happenstance”という概念は教えてくれています。
成功者の方の自伝を読んでいても、一定の成功法則というものはあまり存在せず、その時々に遭遇した偶発的な変化に応じたことの積み重ねが、成功の要因となっていったケースが殆どではないでしょうか。
夢に明確な日付を入れること以上に大事なのは、その時々で「こっちへ行ったほうが良い」と思うことがあれば、すぐに実践できる、まずはやる、ということです。
成功するかどうかわからなくても、自分が今ベストだと思うことから逃げずに動くことによって、新しい現実が生まれていき、その積み重ねでやがて自らの道が拓けていく、今はそんな素晴らしい時代なのです。