この5月、サイバーテロによる被害が、世界150カ国で確認されました。日本でも感染が各地で起きたことから、予防策としてウィルス対策ソフトを購入される方もいることでしょう。ある程度まとまった費用支出となった際に、ウィルス対策ソフトが資本的支出による資産とみなされるか、修繕に必要な支出として修繕費とみなせるかが問題となります。以下、解説致します。
WannaCryなどコンピューターウィルスが世界150カ国で暗躍
5月初旬から中旬にかけて、「WannaCry」と名付けられたコンピューターウィルスなどによる被害が、世界150カ国で確認されました。
日本でも企業や個人を問わず、データを勝手に暗号化してパソコンを動かせなくしたうえで、金銭を要求する「身代金要求型」ウィルスへの感染が、各所から報告されています。
これらウィルスの被害から自分のパソコンを守るためには、
- 最新のウィルス対策ソフトを利用する
- OS(ソフトウェア)やアプリを最新のものにする
- パソコン内データについてバックアップを常にとっておく
という対策を取らねばなりません。
ウィルス対策ソフトの購入費用は修繕費?それとも資本的支出?
今回のようなサイバーテロにより、ウィルスに感染してしまったり、感染しなくともウィルス対策を講じることを決めた場合、最新のウィルス対策ソフトを購入する方もいらっしゃることでしょう。
通常、ウィルス対策ソフトを購入した費用は10万円以内なら、修繕費として当期に即時償却することが可能です。
ただし、IT企業のようにPCを多数使用する場合、この際に支出する費用が10万円を超えることもあります。
そうなると、ウィルス対策ソフトの購入が資本的支出なのか、修繕費なのかが問題となります。
資本的支出とみられる場合は、固定資産として数年に渡る減価償却が必要になり、修繕費と認められれば当期に即時償却することが可能です。
この点、法人税法は以下のように定めています。
内国法人が、修理、改良その他いずれの名義をもつてするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額で次に掲げる金額に該当するもの(そのいずれにも該当する場合には、いずれか多い金額)は、その内国法人のその支出する日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額
二 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額
法人税法施行令第132条(資本的支出)
文言を意訳して今回の事例に当てはめると、「パソコンの使用可能期間を延長させたり、パソコンの価値をあげる商品の購入は、資本的支出として減価償却の対象となる。」ということになります。
ウィルス対策ソフトの購入費用はパソコンの正常作動・現状維持に資する
では、ウィルス対策ソフトがこれらの要件に当てはまるものかと言われれば、それは「否」です。
ウィルス対策ソフトは、パソコンが正常な状態で作動維持するうえで必要な費用だからです。
従って、ウィルス対策ソフトにかける費用は、修繕費に全て計上したうえで、その期に一括償却すれば事足りることになります。
「WannaCry」の攻撃は収束を迎えていますが、米国政府は今後も更なるサイバーテロが短期間のうちに起こると予測しています。
ウィルス対策ソフトはお金を出来るだけケチらずに、必要な出費として予算に組み込んでおくことをお勧めいたします。