欠品を防ぐ目的や、機会損失を防ぐために、同業者に商品を融通してもらうのはよくある話です。商品を融通してもらった場合、商品代金を支払うか、代物による返済・交換を行いますが、これらの行為によって消費税は発生するのでしょうか?また、融通を受ける際に金銭のやり取りが発生するなら循環取引にも気をつける必要があります。その理由も説明します。
同業者と仲良くするメリットの1つ「商品の融通」
同業者はライバルであると同時に、自社のビジネスにプラスを生み出す隣人ともなります。
特に、同業者間でお互いの商品を融通し合う場合、その関係にはメリットが生じます。
たとえば、予想以上に商品が売れてしまい欠品を起こしそうになった時、同業者に依頼して商品を融通してもらうことで、取引先との信頼関係をつなぐことができます。
顧客に商品を提供したいのに自社に在庫が無いため、同業者に問い合わせて商品を調達し、販売の機会損失を防ぐこともできるでしょう。
商品を融通してもらった時に消費税は生じる?
上記のように、商品を融通してもらった場合、
- 融通してもらった商品の代金を支払う
- 代物による返済を行う
といった形で同業者への対価支払や、返済を行うことになりますが、これら一連のやり取りで果たして消費税はかかるのかが問題となります。
1)融通してもらった商品の代金を支払う
融通してもらった商品に対して代金を支払う場合、これは融通した同業者から融通を受けた会社への「資産の譲渡」とみなされ、消費税の課税を受けることになります。
(課税の対象)
第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。
2)代物による返済・交換を行う
それでは、同等の代替商品によって後で返済を行う場合や、同時に交換を行う場合はどうでしょうか?
消費税基本通達は、以下のようにこれらの取扱を決めています。
1 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準
(中略)
(3) 代物弁済をした場合・・・・代物弁済により消滅する債務の額
(4) 資産を交換した場合・・・・交換により取得する物品の時価(交換差金を受け取る場合はその金額を加算した金額とし、交換差金を支払う場合はその金額を控除した金額となります。)
上記によると、代物弁済や資産(商品)の交換を行った場合、これによって生じる差額が消費税の課税対象額となります。
つまり、弁済や交換により差額が生じず、金銭のやり取りが起こらないなら、消費税の課税対象がない行為とみなされることになります。
金銭のやり取りが発生するなら循環取引に注意
なお、同業者間で融通し合う取引を行う行為は、行き過ぎると違法行為となる場合があります。
金銭のやり取りが生じる場合は薄利でも売上があがるため、金融機関からは企業としての成長性が高いように見えて、融資をもらいやすくなります。
この行為を同業者間や取引先と示し合わせて行うことは、金融商品取引法で違法行為の循環取引とみなされます。
循環取引は通常の商行為で必要とされる、売買契約書や発注書、納品書、請求書など、一通りの書類が揃うため、会計士や税理士にもなかなか見つけにくい行為です。
また、当座は、消費税を支払ったとしてもそれ以上の融資がもらえることで、一見すればメリットがあるように思えます。
循環取引以外で得る利益がこれをカバーできない状況で循環取引を続けるなら、いずれは資金繰りがパンクします。
同業者間で融通を働いてもらうなら、これらの行為は絶対に行わないよう気をつける必要があるでしょう。
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